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ホーム > 気象統計情報 > 海洋の健康診断表 > [気候]海水温の数か月から十年規模の変動 > 北西太平洋の底層の水温変化

北西太平洋の底層の水温変化

平成24年3月21日発表(次回発表予定 平成25年3月21日)
気象庁地球環境・海洋部

診断(2011年)

2011年の気象庁の海洋気象観測船による観測によれば、千島列島南東の海域Dで底層の水温は1985年と比較すると0.005℃高くなっています。
太平洋では、1990年代以降、他の海域においても底層の水温上昇が確認されています。これらの観測結果や数値モデルによる解析結果から、北西太平洋の底層での昇温は、南極周辺の海域における海水の冷却が弱まり、底層までの海水の沈み込みが弱くなった影響が海底地形に沿って数十年かけて北西太平洋まで伝播して水温の上昇として現れたものであることが示唆されます。このような底層の水温上昇が地球温暖化に伴うものかどうかについては、継続的な観測データによる検証が必要です。
北西太平洋の底層の水温変化の診断における診断を行う観測ライン
海域A
平均水温(℃)1994年との差
19941.187-
20101.191+0.004
海域B
平均水温(℃)1994年との差
19941.180-
20101.182(+0.002)
海域C
平均水温(℃)1994年との差
19941.152-
20101.157+0.005
20111.154(+0.002)
海域D
平均水温(℃)1985年との差
19851.109-
19991.113+0.004
20071.114+0.005
20111.114+0.005
海域E
平均水温(℃)1992年との差
19921.113-
20111.117(+0.004)

北西太平洋における底層の水温

図中に示す5海域で、1980年代から1990年代にかけて行われた海面から海底までの高精度の海洋観測の結果と近年実施した同じく高精度の海洋観測の結果からそれぞれの水温1.2℃以下の領域での平均水温を見積もり、平均水温の差を示しています。平均水温の差の( )の値は有意な変化ではないことをあらわします。中央の地図で、薄い灰色で示した部分は、水深が4000mより浅い海域をあらわしています。各海域の詳しい範囲及び使用した観測データについては「北西太平洋の底層の水温変化:補足資料」をご覧ください。平均水温の差の値をクリックすると底層の水温変化の断面図をご覧になれます。

水温は、水圧による水温上昇分を除いたポテンシャル水温であらわします。

注)端数を四捨五入しているため、表記した数値の差は「平均水温の差」と値が一致しない場合があります。

北西太平洋の底層の平均水温データ[テキスト形式:2KB]


解説

気象庁では、2010年に東経137度に沿った観測線(東経137度線、海域A、B及びC)、2011年に東経137度線の南部(海域C)、千島列島の南東沖の観測線(海域D)及び東経165度に沿った観測線(東経165度線、海域E)において海面から海底までの高精度の海洋観測を実施しました。

北西太平洋の底層(水温1.2℃以下の領域)の平均水温は、東経137度線の海域Aにおいて1994年と比較して2010年は0.004℃、千島列島南東の海域Dにおいて1985年と比較して2011年は0.005℃上昇しています。東経137度線の海域Bで1994年と比較して2010年は0.002℃、同じく東経137度線の海域Cで1994年と比較して2011年は0.002℃、東経165度線の海域Eで1992年と比較して2011年は0.004℃底層の平均水温が上昇しているものの、使用した測器の精度を考慮すると有意な変化とはなっていません。

これまでに太平洋では1990年代と2000年代において海面から海底までの高精度の海洋観測が行われており、それらの観測結果でも底層において0.005〜0.01℃の水温上昇が報告されています(Fukasawa et al., 2004, Kawano et al., 2006, Johnson et al., 2007)。

北太平洋底層における水温上昇は、深層循環の時間スケール(約千年)と比べてはるかに短い約40年間で、南極周辺の海域における大気海洋間の熱交換の変化が、海底地形に沿って伝播したものであるという数値モデルによる数値実験の結果が報告されています(Masuda et al., 2010)。太平洋の底層水は、大西洋の高緯度域のほか、南極周辺の海域での冷却により沈み込んだ海水を主な起源としています(太平洋における深層循環)。これらの北西太平洋の底層での昇温は、南極周辺の海域における海水の冷却が弱まり、底層までの海水の沈み込みが弱くなった影響が海底地形に沿って数十年かけて北西太平洋まで伝播して水温の上昇として現れたものであることが示唆されます。

深層循環の変化は気候に大きな影響を与えます。今回の底層の水温上昇が地球温暖化に伴うものかどうかについては、継続的な観測データによる検証が必要です。今後、南極周辺の海域を起源とした深層循環の状態がどのように変化するのか、長期的に監視を続ける必要があります。

参考文献

  • Fukasawa, M., H. Freeland, R. Perkin, T. Watanabe, H, Uchida, and A. Nishina, 2004: Bottom water warming in the North Pacific Ocean. Nature, 427, 825-827.
  • Johnson, G.C., S. Mecking, B.M. Sloyan and S.E. Wijffels, 2007: Recent Bottom Water Warming in the Pacific Ocean. J. Climate, 20, 5365-5375.
  • Kawano, T., M. Fukasawa, S. Kouketsu, H. Uchida, T. Doi, I. Kaneko, M. Aoyama and W. Schneider, 2006: Bottom water warming along the pathway of lower circumpolar deep water in the Pacific Ocean. Geophys. Res. Lett., 33, L23613 doi:10.1029/2006GL027933.
  • Masuda, S., T. Awaji, N. Sugiura, J. P. Matthews, T. Toyoda, Y. Kawai, T. Doi, S.Kouketsu, H. Igarashi, K. Katsumata, H. Uchida, T. Kawano and M. Fukasawa, 2010: Simulated rapid warming of abyssal North Pacific waters. Science, 329, 319-322.

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