総括要旨

総括要旨

 気象庁が実施している、温室効果ガス、オゾン層と紫外域日射、大気混濁度、降水・降下じん、及び海洋汚染に関する、2007年までの観測及び解析の結果概要は、以下のとおりである。

二酸化炭素

  • 綾里、南鳥島及び与那国島で観測された大気中の二酸化炭素濃度は、いずれの観測点でも、冬季から春季に濃度が高く、夏季から秋季に濃度が低いという季節変動と、年とともに濃度が増加する傾向が明瞭にみられる。濃度年増加量は、特に、2002年以降、2004年を除いて濃度年増加量が2.0 ppm/年より大きくなっている。

  • 温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)に報告された2007年までの二酸化炭素濃度観測データを用いた解析によると、2007年の全球平均濃度は383.1 ppmとなっており、産業革命(18世紀後半)以前の平均的な値である280 ppmに比べて37%増加している。過去10年間の世界の平均濃度年増加量は2.00 ppm/年で、1990年代の平均濃度年増加量 約1.5 ppmより大きくなっている。

  • 世界の二酸化炭素濃度の観測データからモデルを使って二酸化炭素放出・吸収量(フラックス)を推定した結果、ピナトゥボ火山の噴火による影響で陸域の放出量が大きく減少した1991〜1992年を除いて、エルニーニョの時期(1986〜1988年、1997〜1998年、2002〜2003年)にやや遅れて陸域の放出量が増大していることが分かった。

  • 2007年の東経137度線及び東経165度線に沿った北西太平洋亜熱帯域の表面海水中の二酸化炭素濃度は、1〜2月に大気中と比べて低く、6〜8月には大気とほぼ同程度であったか大気中と比べて高かった。

  • 東経137度線の北緯7〜33度で平均した二酸化炭素濃度は、2007年冬季の洋上大気中では384.7 ppmで前年より0.2 ppm減少、1984年以降の平均で1.7±0.1 ppm/年の割合で増加であった。表面海水中では、344.6 ppmで前年より2.6 ppm増加、1984年以降の平均で1.6±0.3 ppm/年で増加であった。


2007年の大気中二酸化炭素濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppm)
前年との濃度差
(ppm)
日本綾里386.6+1.3
南鳥島384.6+0.9
与那国島386.3+1.7
世界383.1+1.9

綾里、南鳥島及び与那国島の大気中の二酸化炭素濃度月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化

綾里、南鳥島及び与那国島の大気中の二酸化炭素濃度月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化。

緯度帯別の大気中の二酸化炭素濃度の経年変化

緯度帯別の大気中の二酸化炭素濃度の3次元表現図(1983年〜2007年)。

逆解法による陸域と海域の月平均総二酸化炭素放出量とエルニーニョ監視指数との関係

逆解法による陸域と海域の月平均総二酸化炭素推定放出量(負は吸収量を示す)とエルニーニョ監視指数との関係。


2007年の海洋の二酸化炭素の観測結果。

2007年の値前年の値との差
平均濃度
(ppm)
冬季の東経137度
(北緯7〜33度)
大気384.7−0.2
海水344.6+2.6
正味交換量
(推定値、PgC/年)
北西太平洋亜熱帯域
(東経130〜165度、北緯11〜30度)
−0.068+0.004
太平洋赤道域
(東経135〜西経95度、南緯10〜北緯5度)
+0.62+0.10

大気−海洋間の二酸化炭素分圧差の分布。

大気−海洋間の二酸化炭素分圧差(ΔpCO2)の分布。(a)2007年1月17日〜3月11日、(b)2007年4月24日〜5月15日、(c)2007年6月7日〜8月7日、(d)2007年10月20日〜11月24日。

東経137度線の7N〜33Nで平均した海洋と大気中の二酸化炭素濃度の経年変化

東経137度線の7°N〜33°Nで平均した海洋と大気中の二酸化炭素濃度の経年変化(1984〜2007年)。

赤道域における月ごと及び年ごとの大気・海洋間の二酸化炭素フラックス推定値

北西太平洋亜熱帯域(10°S〜5°N、135°E〜95°W)における(a)月ごと及び(b)年ごとの大気・海洋間の二酸化炭素フラックス推定値。エルニーニョ期間を赤で、ラニーニャ期間を青で(a)に示している。1 PgCは炭素換算で10億トン。


メタン

  • 綾里、南鳥島と与那国島で観測された大気中のメタン濃度は、季節変化を繰り返しながら、長期的に見ると濃度が増加している。観測開始から2003年にかけて見られていた増加傾向は、2004年以降不明瞭となっていたが、2007年には綾里で再び増加しており、今後も注意深く見ていく必要がある。

  • WDCGGに報告された世界の大気中メタン観測データの解析によると、2007年の全球平均濃度は1,789 ppbであり、2006年から6 ppb増加し、過去最高であった2003年の1,785 ppbも4 ppb上回るとともに、産業革命以前の平均的な値である約700 ppbに比べて約2.6倍になっている。2006年から2007年の濃度増加量6 ppbは、1998年以来の大きい値となったが、この増加がメタンの新たな増加傾向の始まりであるかどうかはまだ判断できない。

  • これまで北西太平洋の赤道域、亜熱帯域及び亜寒帯域で観測された洋上大気中と表面海水中のメタンの観測結果では、海洋はほぼメタンの放出域であり、2007年も同様の結果となった。


2007年のメタン濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppb)
前年との濃度差
(ppb)
日本綾里1,868+9
南鳥島1,805 0
与那国島1,824 0
世界1,789+6

綾里、南鳥島及び与那国島の大気中のメタン濃度月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化

綾里、南鳥島及び与那国島における大気中のメタン濃度の月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化。

緯度帯別の大気中のメタンの経年変化

緯度帯別の大気中のメタン濃度の3次元表現図(1984年〜2007年)。


ハロカーボン類

  • 綾里でのハロカーボン類の観測によると、CFC-11濃度は1993〜1994年の約270 pptをピークとしてゆるやかに減少している。CFC-12濃度は2005年をピークにここ2年は減少している。CFC-113濃度は2001年をピークにその後はゆるやかに減少している。
  • WDCGGに報告された2007年までのハロカーボン類の濃度観測データによると、CFC-11は、北半球で1992〜1993年頃、南半球で1993〜1994年頃を境に、増加からゆるやかな減少傾向に転じている。CFC-12は、1990年頃から増加率が低下し始め、現在ではほぼ変動のない状態となっている。CFC-113は、北半球では1993〜1994年頃、南半球では1997年前後を境として、ゆるやかな減少傾向に転じている。


2007年のハロカーボン類濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppt)
前年との濃度差
(ppt)
綾里CFC-11251−2
CFC-12544 0
CFC-113 78−1
CH3CCl3 15−2
CCl4 97−2

 綾里における大気中のCFC濃度の月別値

綾里における大気中のCFC-11、CFC-12及びCFC-113の濃度の月別値。


一酸化二窒素

  • 綾里で観測された、2007年の大気中一酸化二窒素の年平均濃度は322.4 ppbで、過去10年間の平均の濃度年増加量は0.8 ppb/年である。

  • WDCGGに報告されたデータから算出した一酸化二窒素の全球平均濃度は、2007年には320.9 ppbまで上昇し、産業革命以前に比べ19%増加している。濃度年増加量は過去10年間の平均で0.77 ppb/年である。


2007年の一酸化二窒素濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppb)
前年との濃度差
(ppb)
綾里322.4+1.3
世界320.9+0.8

綾里における大気中の一酸化二窒素濃度の月別値の経年変化

綾里における大気中の一酸化二窒素濃度の月別値の経年変化。


一酸化炭素

  • 一酸化炭素濃度は、日本国内の各地点とも全期間通して見るとわずかな減少傾向があるようにも見えるが、年による濃度変動もあり、有意なものではない。

  • WDCGGの解析による2007年の一酸化炭素の全球平均濃度は約96 ppbである。季節変動成分を除いた濃度は北半球中緯度でもっとも高く、南半球では低い。濃度年増加量は、1992年から1993年にかけて一時的な減少、1997年から1998年にかけてと2002年から2003年にかけて一時的な増大が主に北半球でみられる。


2007年の一酸化炭素濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppb)
前年との濃度差
(ppb)
日本綾里166+1
南鳥島111
与那国島158−1
世界約96+2

綾里、南鳥島及び与那国島における大気中の一酸化炭素濃度の月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化

綾里、南鳥島及び与那国島における大気中の一酸化炭素濃度の月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化。


対流圏オゾン

  • 綾里では 1990年以降、全体として緩やかな増加傾向がみられたが 2003年以降増加傾向ははっきりしていない。

  • 国内の地上オゾン濃度は、3地点とも夏季に濃度が低くなる季節変動がみられる。これは、夏季に卓越するオゾン濃度が低い海洋性気団による影響を強く受けるためと考えられる。オゾンゾンデによる対流圏オゾンの観測でも同様の季節変動がみられるが、つくばの地上付近では光化学的な生成によるとみられる濃度の上昇が夏季に時折みられる。


2007年の地上オゾン濃度の観測結果。

2007年平均濃度
(ppb)
前年との濃度差
(ppb)
綾里40+1
南鳥島25−5
与那国島38−1

綾里、南鳥島及び与那国島における大気中の地上オゾン濃度の月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化

綾里、南鳥島及び与那国島における地上オゾン濃度の月別値と、季節変動成分を除いた濃度の経年変化。


オゾン層

  • 2007年の日本上空におけるオゾン全量は、札幌では3月から4月にかけて、つくばでは4月から5月にかけてと8月に、それぞれ多い日が継続した。那覇では年を通して多い日が目立った。一方、札幌、つくばの9月には、オゾン全量が少ない日が継続した。

  • オゾン全量は、札幌とつくばで1980年代から1990年代半ばにかけて減少したが、これ以降はほとんど変化がないか、緩やかな増加傾向が見られる。那覇では観測開始以来緩やかに増加している。

  • 2007年のオゾンホールは、9月13日に2007年の最大の面積である2,490万km2にまで発達したが、最近10年間(1998年以降)でみると、2002年、2004年についで規模が小さかった。

  • 2007年の全球のオゾン全量は、ほとんどの地域で参照値より少なかった。オゾン全量の世界的な長期変化傾向は、北半球ではヨーロッパ北部から西シベリアにかけて、南半球では南米南方からアフリカ南方上空にかけてそれぞれ減少が大きい。減少は両半球とも春季に顕著である。


国内4地点上空におけるオゾン全量年平均値の変化

国内4地点(札幌、つくば、那覇、南鳥島)上空におけるオゾン全量年平均値の変化。

オゾンホールの面積(オゾン全量が220 m atm-cm以下の領域)の推移

オゾンホールの面積(オゾン全量が220 m atm-cm以下の領域)の推移。上:赤線は2007年、黒線は過去10年(1997〜2006年)の日別の最大値及び最小値を示す。下:1979年からの年最大値の経年変化。黒い横線は南極大陸の面積(約1,400万km2)。

オゾン全量トレンドの全球分布

1980年代におけるオゾン全量変化量(トレンド、%/10年)の全球分布。TOMS及びOMIの1979年から2007年のデータに対してEESCフィッティングを行っている。


紫外線

  • 札幌における月平均紅斑紫外線量は、6月と7月にその月として過去最大となった。つくばでは、3月以降多くの月で参照値に比べて多く、3月と9月にはその月として過去最大となった。那覇では、一年を通して並か少ない月が多く、4月はその月として過去最小だった。

  • 1990年代初め以降、札幌、つくば、那覇の紅斑紫外線量にはいずれも長期的な増加傾向が現れているが、同期間内にはオゾン全量に減少傾向がみられないことから、エーロゾル量や天気傾向の変化が原因である可能性がある。


国内3地点における紅斑紫外線量年積算値の変化

国内3地点(札幌、つくば、那覇)における紅斑紫外線量年積算値の推移。直線は全期間の長期的な傾向(回帰直線)を示す。


エーロゾル

  • 国内(綾里、南鳥島及び与那国島)における2007年のサンフォトメータによる観測では、エーロゾル光学的厚さは例年と同様の春季に極大が現れる季節変動がみられた。与那国島の3月のエーロゾル光学的厚さの月平均値は、1998年1月以降の月平均値の中で最も大きな値となった。

  • 綾里のライダーによる2007年のエーロゾルの鉛直分布の観測によれば、エーロゾル濃度に相当する散乱比は、一般的に対流圏は成層圏に比べて大きく、季節別では、対流圏の中層では春に、下層では夏にそれぞれ大きかった。高度1.5 kmでは春と夏の年2回極大が現れる傾向がある。


綾里、南鳥島、与那国島における波長500 nmのエーロゾル光学的厚さとオングストローム指数の月平均値の推移(2007年)

綾里、南鳥島、与那国島における波長500 nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD (500nm))とオングストローム指数(α)の観測結果(2007年)。1日3回の観測結果に基づくAOD (500nm)を印で、αを印で表し、連続観測の結果に基づくAOD (500nm)の時別値を印で、αの時別値を印で表した。


黄砂現象

  • 2007年は、黄砂観測のべ日数が482日で、4月1日〜3日と5月25日〜28日には北海道地方から南西諸島にかけての広範な地域で黄砂現象が観測された。

  • 2000年以降、黄砂観測のべ日数の大きい年が比較的多いが、全体としては年々の変化が多く、長期的な傾向は必ずしも明瞭でないと考えられる。


日本における年別黄砂観測のべ日数(1990〜2007年)

日本における年別黄砂観測のべ日数(1967〜2007年)。

直達日射及び大気混濁度

  • 2007年の直達日射積算量は、札幌の7月と11月、つくば(館野)の5月と6月、石垣島の2月が平年より顕著に多かった。他の月ではほぼ平年並みであった。長期的な傾向として1990年頃を境に増加が始まっており、およそ10年で約1 MJ/m2の増加が見られる。

  • 2007 年の大気混濁係数は、全般的にほぼ平年並みであるが、札幌では7月に平年より低く、石垣島では4月に平年より高い値を示した。

  • 大気混濁係数は、1991 年のピナトゥボ火山噴火によって一時大幅に上昇したが、その後次第に小さくなり、現在では、1982 年のエルチチョン火山噴火以前のレベルに戻り、その後わずかに減少しながら、ほぼ1963年のアグン火山噴火直前のレベルまで戻っている。


ホイスナー・デュボアの混濁係数の全国14地点平均値の経年変化

ホイスナー・デュボアの混濁係数(月最小値)の全国14地点平均値の経年変化(1935〜2007年)。


降水・降下じん

  • 2007年の降水中の酸性度は、綾里がpH 4.6、南鳥島がpH 5.4であった。綾里では、観測を開始した当初の1976年〜1977年までpH 5.0以上であったが、それ以降はpH 4.4〜pH 5.0の間で推移しており、南鳥島では、1996年の観測開始以降、pH 5.5〜pH 5.8とほぼ一定で推移していたが、近年pHが低下している。


日ごと降水中pHの頻度分布(2007年)

日ごと降水中pHの頻度分布(2007年)。(a)は綾里、(b)は南鳥島。

綾里と南鳥島における降水中pHの年平均値の経年変化

綾里と南鳥島における降水中pHの年平均値の経年変化。


海洋汚染

  • 日本周辺海域で2007年に観測された浮遊汚染物質は10.3個/100kmで、2000年代に入ってから増加傾向にある。

  • 微量のタールボールが2007年は春季に東経137度線の黒潮域で採取された。1996年以降は北西太平洋全般にタールボールが採取されることはまれになっている。

  • 日本周辺海域・北西太平洋で2007年に観測された重金属のうち、カドミウムの表面海水中の濃度は、北海道南東沖で高く、15〜67 ng/kgであった。2007年の北緯30度以南の平均濃度は1.9 ng/kgで、1997年以降ほぼ同レベルで推移している。水銀の平均濃度は、海面で 3.8 ng/kg、1,000 m深で 3.5 ng/kgとなっており、1986年以降ほぼ同レベルで推移している。


プラスチックなどの浮遊汚染物質の分布図

プラスチックなどの浮遊汚染物質の分布図(2007年)。(a)冬季、(b)春季、(c)夏季、(d)秋季。

浮遊タールボールの経年変化

浮遊タールボールの経年変化(1978〜2007年)。


内容構成一覧