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ホーム > 気象統計情報 > 地球環境・気候 > [刊行物]大気・海洋環境観測報告 > 第7号(2005年観測成果) >内容構成> 観測所と観測方法

7.3.8 降水降下じん化学分析

@分析データの品質管理

 気象庁ではWMOが実施している全球大気監視(GAW)計画の一環として、地球規模の大気の汚染状況を示す降水のpH、各種イオン濃度などの観測を実施している。降水試料の採取から分析までの処理、及び分析値の品質管理については、WMO(1993a)及びWMO(1994)に準拠している。
 降水の採取は綾里と南鳥島で日毎に行い、月毎に海洋気象課汚染分析センターに送付する。送付された降水試料は汚染分析センターで分析を行い、品質管理を行った後に公表している。
 品質管理は、測定した陽イオン(水素イオン濃度(pH)とナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン)の当量の合計と陰イオン(塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン)の当量の合計を比較するイオンバランス、及び測定した電気伝導度と水素イオン濃度(pH)及び各種イオン濃度から理論的に計算される電気伝導度を比較する伝導度バランスの合致する程度で行っている。イオンバランスと伝導度バランスの両方で基準値以内になった分析結果を公表している。

陽イオンと陰イオンの比較

Ion difference [%] = 100×(CE - AE) / (CE + AE)

AE: 陰イオン当量(μeq/l)の合計、次式より算出
  AE = 1000×[ ΣCAi / (Eq.Wt.)Ai ] + 5.1 / 10 (6 - pH)
  CAi : i番目の陰イオンの濃度(mg / l)
  (Eq.Wt.)Ai : i番目の陰イオンの当量
  5.1 / 10 (6 - pH) : 重炭酸塩濃度(25℃、pH>5.0における計算値濃度、μeq/l)

CE: 陽イオン当量(μeq / l)の合計、次式より算出
  CE = 1000×[ ΣCCi / (Eq.Wt.)Ci]+[10 (6 - pH) ]
  CCi : i番目の陽イオンの濃度(mg / l)
  (Eq.Wt.)Ci : i番目の陽イオンの当量
  10 (6 - pH) : H+イオン濃度(μeq / l)

表 7.3.8.1 陽イオン、陰イオン当量重量。
Table 7.3.8.1 Equivalent weights for selected anion cation.

陽イオン、陰イオン当量重量(g)
塩化物イオン (Cl-)35.45
硝酸イオン (NO3-)62.01
硫酸イオン (SO42-)48.03
アンモニウムイオン (NH3+)18.04
ナトリウムイオン (Na+)22.99
カリウムイオン (K+)39.1
マグネシウムイオン (Mg2+)12.15
カルシウムイオン (Ca2+)20.04


表7.3.8.2 必要とされるイオンバランスの基準値。
Table 7.3.8.2 Required criteria for the ion balance.

陽イオン+陰イオン (μeq / l)Ion Difference許容値 (%)
≦ 50≦ ±60
> 50 ≦ 100≦ ±30
> 100 ≦ 500≦ ±15
> 500≦ ±10


伝導度の比較

Δk (%) = 100×[ (k - kmeas) / kmeas ]

kmeas: 測定された伝導度 (μS / cm)

k : 計算から求めた伝導度(μS / cm)
  k = Σci×Λi0
  ci: i番目のイオンのモル濃度(mmol / l)
  Λi0: i番目のイオンの1モルまたは1当量当たりのイオン伝導度(S cm2 / mol)

  次式より算出

  k = 10 (3 - pH)×349.7 + c(SO42-)×160.0 + c(NO3-)×71.4
    + c(Cl-)×76.3 + c(NH4+)×73.5 + c(Na+)×50.1 + c(K+)×73.5
    + c(Ca2+)×119.0 + c(Mg2+)×106.0 + c(HCO3-)×44.5
  c(HCO3-) = 5.1 / H+ (25℃、pH>5.0において、5.1 / 10 (3 - pH)


表7.3.8.3 理想溶液、25℃における1モルまたは1当量当たりのイオン伝導度。
Table 7.3.8.3 Molar or equivalent ionic conductances at infinite dilution and 25℃ (from CRC Handbook of Chemistry and Physics, 66th Edition , 1985-1986, pp. 167-168).

イオン1モル当たりのイオン伝導度Λi0 (Scm2/mol)
水素イオン (H+)349.7
塩化物イオン (Cl-)76.3
硝酸イオン (NO3-)71.4
硫酸イオン (SO42-)160.0
アンモニウムイオン (NH3+)73.5
ナトリウムイオン (Na+)50.1
カリウムイオン (K+)73.5
マグネシウムイオン (Mg2+)106.0
カルシウムイオン (Ca2+)119.0
重炭酸イオン (HCO3-)44.5


表7.3.8.4 必要とされる伝導度バランスの基準値。
Table 7.3.8.4 Required conductivity balance criteria.

伝導度測定値 (μS / cm)許容値△k (%)
≦ 5≦ ±50
> 5 ≦ 30≦ ±30
> 30≦ ±20

A酸性雨国際比較調査

 降水降下じんの観測では高い分析技術が求められることから、GAW計画に参加している各機関の分析技術の維持・向上及び分析データの品質管理を目的として、降水の分析技術に関する国際比較が行われている。この国際比較の実施及び取りまとめは、WMO/GAW品質保証科学センターであるアメリカ地区品質保証科学センター(ニューヨーク州立大学に設置)が担当している(http://marble.asrc.cestm.albany.edu/qasac/index.html)。
 国際比較は1978年から毎年1回実施されてきたが、1999年12月のWMO/GAW会議で、重金属についてはGAWの枠組では実施しないことになった。一方、降水のpH、各種イオンなどについては従来どおりGAWの品質保証科学センターが担当し、2001年からは年2回国際比較を実施することとなった。この変更にともない、GAW計画に参加するためには国際比較への参加が必要となり、参加しない場合は降水降下じんの観測データがGAWデータとして認められないこととなった。気象庁はGAWの品質保証科学センターが担当する降水のpH、各種イオンなどの国際比較に1983年(第6回)から参加している。
 重金属の国際比較は、2000年1月よりヨーロッパ以外の国も含めてヨーロッパ監視・評価計画(Co-operative Programme for Monitoring and Evaluation of the Long-range Transmission of Air pollutants in Europe: EMEP)の枠組で実施することになった。EMEPは、国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)が推進している重金属、酸性雨などによる大気汚染や広域輸送の監視・評価を行う計画であり、この国際比較の実施及び取りまとめは、EMEP化学調整センター(ノルウェー大気研究所に設置)が担当している(http://www.nilu.no/projects/ccc/index.html)。気象庁はEMEPによる重金属の国際比較に第2回(2002年)から参加している。
 降水の国際比較の手順は次のとおりである。アメリカ地区品質保証科学センターが、各成分を降水に近い濃度に調製した3種類の水溶液試料を濃度を伏せたまま参加各機関に配布し、各機関はそれらの試料を分析して結果を報告する。重金属の国際比較も同様に、ノルウェー大気研究所が、重金属を降水に近い濃度に調製した4種類の水溶液試料を濃度を伏せたまま参加各機関に配布し、各機関はそれらの試料を分析して結果を報告する。各機関が報告した分析値は、それぞれの国際比較担当機関で集計・評価が行われ、その結果が分析機関の実名入りで公表される。許容値から外れた分析値にはフラッグが付けられ、この結果が各機関の分析能力の評価になる。気象庁では毎回許容値の範囲内の結果を出している。


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