温室効果ガスの濃度の変化は観測した空気塊の起源に大きく関係している。そのため、地点・月ごとに空気塊の移動経路を知ることは重要である。以下に、綾里、南鳥島、与那国島の3地点について行った等温位面での後方流跡線計算の結果を月ごとに示す。なお、気象データは気象庁の客観解析データを使用している。
なお、後方流跡線計算の諸元は以下のとおりである。
気象データ:気象庁客観解析データ(6時間間隔)
格子間隔:1.25度×1.25度
計算開始高度:観測所上空1000 m
移流面:等温位面
移流計算間隔:30分
さらに、空気塊が通過する領域を地域ごとに区切り、各観測点の6時間ごとの空気塊がどの地域を通過して来たかの軌跡調査を行った。図7.1.1.20はそのために地図上の地域を分けたものであり、TransCom(第2.1.3節参照)の全球区画を参考に、日本近辺の空気塊経路を考慮して10地域に分類した。それぞれの地域は、
| NW: | 北西アジア域 | MS: | 南西太平洋域 |
| NE: | 北アジア域及び北太平洋域 | CN: | 大陸東岸北域 |
| CW: | 温帯中央アジア域 | CS: | 大陸東岸南域 |
| ME: | 東太平洋域 | MW: | 日本近海域 |
| SE: | 南西アジア域及びインド洋域 | JP: | 日本域 |
である。
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図7.1.1.20 空気塊の軌跡調査に使用した地域分類図。 |
図7.1.1.21に綾里、南鳥島、与那国島の3地点の空気塊について、6時間ごとに空気塊が図7.1.1.20に示された地域区分に従ってどの地域にあったかを色分けした図を示す。横軸は観測日時を示し、縦軸は観測日時を起点として遡った時間数である。縦軸の最上段が168時間(7日)前の位置、ゼロが各地点への到達を示す。
この図では、地点が前線の通過などで異なった空気塊に覆われると、遡った時間軸に沿って色が全面的に変わることとなる(異なった履歴を持った気団に覆われたことを示す)。例えば、図7.2.1.2〜7.2.1.4(第7.2.1節参照)や図7.2.2.2〜7.2.2.4(第7.2.2節参照)の濃度変動とこの空気塊の履歴の変動は一致することが多い。
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図7.1.1.21 綾里についての空気塊の地域通過図(2009年)。 |
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図7.1.1.22 南鳥島についての空気塊の地域通過図(2009年)。 |
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図7.1.1.23 与那国島についての空気塊の地域通過図(2009年)。 |
綾里、南鳥島、与那国島の3地点における空気塊の通過域の割合の年別値について、1996年から2005年までの10年間の平均と2009年の状況を図7.1.1.24に示す。1996年から2005年までの10年間の平均から、綾里では7、8月前後に太平洋からの移流が見られ、その他の月は、特に冬季を中心としてシベリア、中国北部から移流して来ることが多いこと、南鳥島では冬季のみ大陸からの移流がしばしば見られ、その他の月は東海上から移流して来ることが多いこと、与那国島では夏季には南海上から、冬季は中国大陸から移流して来ることが多く、秋季には日本近海域から移流して来ることが多いことがわかる。3地点における、空気塊通過域の10年間平均と2009年の状況を比較しての各温室効果ガスの濃度変動の特徴については、第2章で記述した。