重金属

6.2 重金属

 観測種目及び観測方法は以下のとおりである(第7.4節に詳しく示す)。

カドミウム:
 表面海水は船上から500 mlのポリ容器に直接採取し、深さ1000 mの海水はニスキン採水器を用いて採取する。海水を採取した後、塩酸を加えて保存する。APDC−DDTC混合キレート剤及びクロロホルムによる溶媒抽出で海水からカドミウムを分離・濃縮し、炭素炉原子吸光光度計により測定する。
水銀:
 上記方法で採取した海水に硫酸を加えガラス瓶に保存する。塩化第一スズによる還元気化及び金粒子によるトラップで海水から水銀を分離・濃縮し、冷原子吸光光度計により測定する。

カドミウム

結果

 2009年の季節ごとの海水中のカドミウム濃度を図6.2.1に示す。表面海水中のカドミウム濃度で高い値が見られたのは、冬季〜春季の北海道南方で35〜64 ng/kg、及び夏季の東経165度線の北緯45度以北で76〜112 ng/kgであった。これらの海域では鉛直混合による下層からの供給により、例年他の海域より高濃度になる傾向がある。1000 m深の値は、30〜135 ng/kgの範囲にあり、これまでの観測と同程度であった。
 2009年の北西太平洋における北緯30度以南の海面のカドミウムの平均濃度は 1.6 ng/kgであり、1997年以降ほぼ同レベルで推移している。

表面海水中のカドミウム濃度

図6.2.1 表面海水中のカドミウム濃度(2009年)。(a)冬季、(b)春季、(c)夏季、(d)秋季。図中の点は観測点。()内は深度1,000 mの値。
Fig. 6.2.1 Distributions of cadmium concentration in surface sea water: (a) winter, (b) spring, (c) summer and (d) autumn of 2009. Dots indicate observation stations. Values in parentheses indicate cadmium concentration at a depth of 1000 m.

解説

 カドミウムは、一般に海洋表面から1000 m深付近まで深さとともに増加する鉛直分布を示す。これは、カドミウムが栄養塩などと同様に、海洋表層で生物中に取り込まれること、またその生物粒子が下層へと鉛直輸送され、有機物の分解とともに再び海水に溶け出すことによると考えられている。そのため、日本周辺海域や亜寒帯域など冬季に強い鉛直混合が起こる海域では下層からの水が表層へ供給されるため表面海水中のカドミウム濃度が高くなる。一方、そのような鉛直混合が弱い亜熱帯域や熱帯域では表面海水中のカドミウム濃度は低い。

水銀

結果

 図6.2.2に2009年の季節ごとの海水中の水銀濃度を示す。ほとんどの観測点(104試料中89試料)で水銀濃度は 10 ng/kg未満であったが、14測点(15試料)で 10 ng/kg以上の値がみられた。全観測点の平均濃度は海面で 4.3 ng/kg、1,000 m深で 5.3 ng/kgとなっており、1986年以降ほぼ同レベルで推移している。

表面海水中の水銀濃度

図6.2.2 表面海水中の水銀濃度(2009年)。(a)冬季、(b)春季、(c)夏季、(d)秋季。図中の点は観測点。()内は深度1000 mの値。
Fig. 6.2.2 Distributions of mercury concentration in the surface sea water: (a) winter, (b) spring, (c) summer and (d) autumn of 2009. Dots indicate observation stations. Values in parentheses indicate mercury concentration at a depth of 1000 m.

解説

 水銀の濃度は、これまでの観測において海域、季節及び深度による違いが小さく、ほぼ均一であると考えられる。


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