降水・降下じんとは、科学的な見地からすると物質が大気から地上へ向かう沈着の過程であり、物質の放出・輸送とともに物質循環を構成している重要な概念である。近年、大気中の酸性物質が地上に降下沈着し、河川、土壌、植物などの環境に悪影響を及ぼすことが問題となっている。大気中の主要な酸性物質は、化石燃料の燃焼で大気中に放出される二酸化硫黄や窒素酸化物を元として、光化学反応過程などによって生成される硫酸や硝酸である。これらについて一般には酸性雨と言われることが多いが、気象庁では雨以外の粒子等の沈着も扱うため、降水・降下じんの化学成分と呼んでいる。
気象庁では、GAW計画(第9.1節参照)のもと、大気中の化学成分などの組成の指標となる酸性沈着の長期的な状況を監視するため、降水及び降下じんの採取を1976年から綾里、1996年から南鳥島で開始し、pHと主なイオン濃度の分析を行っている(第7.2.15節参照)。データの品質管理及び国際比較調査については、第7.3.10節に紹介している。
これらの観測の結果は、GAW降水化学世界資料センターへ報告され、地球全体の監視の一端を担っている。