大気混濁係数は、各地における地方真太陽時の9、12、15時の前後30分の範囲内に太陽とその周辺に雲がない場合に、観測された直達日射量の瞬間値から求めている。雲の有無については、統計値の均質性を向上させるため、直達日射観測装置の自動処理で同じ基準で選択された瞬間値を採用し、これから大気混濁係数を算出した。なお、比較に用いる平年値についても、同様の方法を用いて算出した大気混濁係数から求めている。
図4.3.2.1に2009年の札幌、つくば(館野)、福岡、石垣島における大気混濁係数を示す(地点の詳細は第7.1.4節参照)。各地点共に大気混濁係数はほぼ平年並だが、つくばの5、10月、福岡の2月、石垣島の12月に平年より顕著に高く、札幌の3、9月に平年より顕著に低い値を示した。
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図4.3.2.1 札幌、つくば(館野)、福岡、石垣島における大気混濁係数(月平均値)の時系列図(2009年)。実線は、大気混濁係数の月平年値である。月平年値の縦棒は平年値の統計期間における月平均値の標準偏差をあらわす。 |
ここでは、地方真太陽時の9、12、15時の前後30分の範囲内に太陽とその周辺に雲がない場合のデータを用いた。観測が開始された時点から現在までのデータをできるだけ採用することにより長期間の経年変化を見られるようにデータ処理を実施し、日々大きく変動する水蒸気や黄砂の影響を除くために、大気混濁係数の月最小値を全国の観測地点で平均し、これを年平均した。
図4.3.2.2に、1960年から2009年までの期間の日本における大気混濁係数の経年変化を示す。1963〜1970年の緩慢な増加と1982〜1985年、1991〜1993年にみられる極大は、それぞれ1963年2〜5月のアグン火山噴火(インドネシア)、1982年3〜4月のエルチチョン火山噴火(メキシコ)、1991年 6月のピナトゥボ火山噴火(フィリピン)によって大気中に大量の火山灰と硫酸塩エーロゾルの生成につながる二酸化硫黄が放出され、成層圏が混濁した結果である。その後、大規模な火山噴火はなく、日本における大気混濁係数はアグン火山噴火以前のレベルで概ね推移している。
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図4.3.2.2 日本における大気混濁係数(月最小値)の平均値の経年変化(1960〜2009年)。全国4地点の観測値から算出。 |
Mishchenko et al.(2007)は、1981年から2006年までの衛星に搭載されたAdvanced Very High Resolution Radiometer(AVHRR)の観測データを用いて全球平均のエーロゾル光学的厚さの経年変動を調べている。その結果は、エルチチョン火山噴火やピナトゥボ火山噴火による上昇と、その後の下降を示しており、日本における大気混濁係数の経年変動と類似している。またピナトゥボ火山噴火前と比べて、1991年から14年間で対流圏のエーロゾル光学的厚さが0.03減って、大気が澄んできていることを明らかにしている。
Deshler et al.(2006)は、気球やライダー、衛星(SAGE II)の観測結果を用いて、1971年から2004年までの成層圏エーロゾルの全量濃度のトレンドを調べている。この大気混濁度の変動は、彼らによるエルチチョン火山噴火やピナトゥボ火山噴火による成層圏エーロゾル量の変動と定性的に一致している。また、彼らは、火山噴火のイベントを除くと、成層圏エーロゾルの長期的な変化傾向はないと結論しており、火山噴火以外の大気混濁係数の変動は、対流圏に原因があると考えられる。