黄砂現象と気候との相互関係
黄砂は、エーロゾルの一種として日射の散乱・吸収及び赤外放射の吸収、雲の生成などを通して、全球の気候に影響を及ぼしている。気象研究所の全球黄砂モデル(Tanaka et al., 2005)によると、黄砂粒子は日射に対して弱い吸収特性を示すため大気を加熱するが、同時に日射を散乱させる日傘効果により地表面に達する日射を減少させている。結果として、全球平均すると、黄砂が大気中にない場合と比較して、−0.3 W/m2という弱い冷却効果を示している(気象庁, 2005)。
黄砂現象に関する長期的なモニタリングとしては、気象観測による検出が有効で、全ほか(2002)は、韓国における過去約100年間の黄砂観測日数を調べ、黄砂現象が1940年代に大きく増加した後減少し、近年再び増えてきていることを示した。
Ding et al.(2005)は、黄砂現象が1980年中期以降に大きく減少したのは、モンゴル高原と中央シベリア上空に平均して現れた高気圧性の定在波による中国西部での南風が黄砂を引き起こす北西風を弱めたことと、北西中国での降雨の増加によることを示している。
Gong et al.(2006)は、1960年から2003年までのデータ解析により次のように気候が黄砂現象に影響を及ぼしているとしている。エルニーニョ現象発生時には、中国での砂塵嵐とダスト量が減少するとともに、多くの黄砂粒子は、北中国西部の砂漠とモンゴルの砂漠を起源とし、黄砂が太平洋を横断する経路が北へ移動する。一方、ラニーニャ現象発生時には、北中国の中央・東部の砂漠が、対流圏中にダストエーロゾルを提供している。さらに、Hara et al.(2006)は1972〜2004年のモデル解析から、3月のアジアの中高緯度のジオポテンシャル高度偏差(APMI)が、中緯度の方が極域よりも偏差が低いパターン、つまり極域から中緯度への寒気の吹き出しが強い状態にあると、3月のダストの発生量が増加することを示すとともに、4月はAPMIのパターンではなく、むしろゴビ砂漠上空の気圧の南北勾配がダスト発生量と関係していることを示している。