サンフォトメータによる観測地点を第7.1.1節に、エーロゾル光学的厚さ(AOD)とオングストローム指数(α)の計算方法を第7.2.11節に示す。
サンフォトメータによる観測は日出から日没まで連続して行い、太陽方向に雲がある場合や、測器保守等で観測を行えなかった時間帯のデータを除いた観測値から、時別値等を計算している。
図4.1.1.1に綾里、南鳥島、与那国島における波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))とオングストローム指数(α)の2009年の観測結果を示す。
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図4.1.1.1 綾里、南鳥島、与那国島における波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))とオングストローム指数(α)の観測結果(2009年)。AOD(500nm)の時別値を●印で、αの時別値を▲印で表した。与那国島の2009年8月以降はサンフォトメータの障害による欠測である。 |
綾里で2009年に観測した最も大きなAOD(500nm)は、6月28日の1.22であった。この時のαは1.20で、綾里としては標準的な値であった。また、6月26日午後から29日にかけて、AOD(500nm)が0.6を上回り、エーロゾルの多い状態が続いた。綾里のライダー観測(第4.1.3節)によると、6月26日午後から27日午前にかけて、地表から4km以下の高度で球形の濃いエーロゾルを観測した。後方流跡線解析(第7.1.1節)によると、6月26日午後から29日にかけて綾里に流入した大気は、最大5日間日本上空に滞留した後に綾里に流入していた。これらのことから、6月26日午後から29日にかけて綾里で観測したエーロゾルは、日本国内の影響を受けた、小さな粒子の割合の多いエーロゾルであったと考えられる。
南鳥島で2009年に観測した最も大きなAOD(500nm)は、3月28日の0.41であった。この時のαは0.88で、南鳥島としては標準的な値であった。後方流跡線解析によると、3月28日に南鳥島に流入した大気は、シベリア等の北西アジア域、ゴビ砂漠を含む大陸東岸北域、日本近海を経由して南鳥島へ流入した。このことから、3月28日に南鳥島で観測したエーロゾルは、大陸の大気汚染の影響を受けたエーロゾルが含まれていたものの、必ずしも小さな粒子の割合が大きくないエーロゾルであったと考えられる。
与那国島で2009年に観測した最も大きなAOD(500nm)は、3月21日の1.01であった。この時のαは1.26で、与那国島としては標準的な値であった。後方流跡線解析によると、3月21日に与那国島に流入した大気は、大陸東岸南域を経由して与那国島に流入してきた。このことから、3月21日に与那国島で観測されたエーロゾルは、大陸の大気汚染影響を受けた、小さな粒子の割合の多いエーロゾルであったと考えられる。
エーロゾル光学的厚さの季節変動は、綾里では春に極大、冬に極小となる。この傾向は、Aoki and Fujiyoshi(2003)の札幌やEck et al.(2005)の2001〜2004年の和歌山県白浜の観測結果ともおおむね一致する。この原因は、局地的な大気汚染に加えて、春に大陸から飛来する黄砂による影響が考えられる。なお、Takemura et al.(2002; 2003)のモデル計算によると、春は日本全域でアジア大陸の大気汚染によるエーロゾルが黄砂と同程度の影響を与えているとされている。春の極大は上記の黄砂による影響に加えて、アジア大陸の大気汚染による影響が重なっている可能性がある。
南鳥島では、ほぼ年間を通して綾里や与那国島に比べて波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))が小さい。これは、陸起源のエーロゾルの発生源であるアジア大陸から遠いためと考えられる。南鳥島の春で平均したAOD(500nm)は、ハワイのラナイの年平均値(0.06)(Smirnov et al., 2002)よりはるかに大きくなっている。この原因としてはアジア大陸からの黄砂や大気汚染の長距離輸送の影響が示唆される。オングストローム指数が綾里や与那国島に比べて小さいことが多いのは、エーロゾルの中で粒径が大きい部類に入る海塩粒子が相対的に多いためと考えられる。南鳥島では、AOD(500nm)が春に極大、秋に極小をとることが多い。
与那国島では、AOD(500nm)が春に極大となり、夏から秋にかけて極小となっている。春に極大になるのは、綾里と同様にアジア大陸からの吹き出しの影響を受け、大陸に起源を持つ黄砂や大気汚染、森林火災の煙などのエーロゾルが運ばれやすいためと考えられるが、混濁の程度は綾里よりも大きい。実際に、Tsutsumi et al.(2004; 2005)は、春に与那国島におけるAODが大きなケースについて、アジア大陸の都市汚染か春に活発となる東南アジアのバイオマス燃焼の煙の影響を受けている可能性を指摘している。
これらのAOD(500nm)の季節変動は、それぞれの観測所のエーロゾルの変動の特徴を表しており、綾里は日本本土、シベリア等の森林火災、アジア大陸からの黄砂や大気汚染の、南鳥島は太平洋上で局所的な影響を受けないバックグランドの、与那国島はアジア大陸の黄砂や大気汚染の影響による変動をそれぞれ代表していると考えられる。
エーロゾル光学的厚さ及びオングストローム指数の月平均値は、その月に取得できた観測値を平均して求めた。ただしサンフォトメータによる観測は晴天時にしか行えないため、観測値の数が少ない場合には月平均値が必ずしもその月を代表する値を示さない可能性がある。なお、観測頻度は2007年3月31日までは1日3回の定時観測だったが、2007年4月1日より日出から日没までの連続観測になった。
図4.1.1.2〜4.1.1.4は、それぞれ綾里、南鳥島、与那国島における1998〜2009年の波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))及びオングストローム指数(α)についての月平均値の経年変化を示す。

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図4.1.1.2 綾里における波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))及びオングストローム指数(α)の月平均値の経年変化。1999年9月から11月まではサンフォトメータのフィルター劣化のため、欠測である。2007年4月以降は連続観測の結果に基づいている。 |
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図4.1.1.3 南鳥島における波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))及びオングストローム指数(α)の月平均値の経年変化。1999年8月から11月までサンフォトメータのフィルター劣化のため、欠測である。2006年9月は台風第12号の影響により観測を休止した。2007年4月以降は連続観測の結果に基づいている。 |
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図4.1.1.4 与那国島における波長500nmのエーロゾル光学的厚さ(AOD(500nm))及びオングストローム指数(α)の月平均値の経年変化。1999年12月は晴天日がなかったため、データが得られなかった。2008年9月及び2009年8月以降はサンフォトメータの障害のため、データを採用していない。2007年4月以降は連続観測の結果に基づいている。 |
綾里では、2003年5月のAOD(500nm)の月平均値が0.613と非常に大きな値となった。この月は、特に22日から23日にかけてAOD(500nm)が1.5を超していた。これは、シベリアで発生した大規模な森林火災による煙の影響を受けたものと考えられる(気象庁, 2005a)。2006年4月のAOD(500nm)の月平均値は0.547と、2003年5月に次ぐ大きな値となった。これは、東北地方から西日本の広い範囲で黄砂が観測された18日にAOD(500nm)が1.3を超えたことや、4日と10日、27日にも黄砂によると思われる0.5を超す大きな値を観測したことによるものである。この月は、エーロゾルの中で粒径が大きい部類に入る黄砂粒子の影響で、αは0.992とその前後の月よりも小さくなった。
南鳥島では、2004年7月のAOD(500nm)の月平均値が0.171となり、1998年から2004年までの累年でみた7月の月平均値と比べて大きな値を示した。これはアジア大陸の大気汚染の影響を受けたエーロゾルによるものと考えられる(気象庁, 2006)。2006年4月のAOD(500nm)の月平均値は0.222となり、1998〜2009年の間の月平均値の中で最大となった。後方流跡線解析によると、この月は前半に大陸からの空気の流入が多かった(気象庁, 2008)ため、アジア大陸起源のエーロゾルの影響を受けていたことが考えられる。
与那国島では、2007年3月にAOD(500nm)の月平均値が0.663と非常に大きな値となった。この月は、15日に0.95、28日に0.76とAOD(500nm)が大きかった。後方流跡線解析の結果などから、これらはインドシナ半島北部の野焼き等によるエーロゾルと考えられる。2006年6月及び7月にはαがそれぞれ0.392、0.448と小さくなった。後方流跡線解析によると、両月とも海洋性の空気の流入が多かったために、エーロゾルの中で粒径が大きい部類に入る海塩粒子の割合が多かったと考えられる(気象庁, 2008)。
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