国内観測所における2009年の紫外線の状況を示す。なお、月別の参照値(累年平均値)からの差が標準偏差以内のときを「並」、それより大きいときを「多い」、それより小さいときを「少ない」と表している。
図3.2.1.1〜3.2.1.3に、札幌、つくば、那覇における2009年の紅斑紫外線量の日積算値の推移を、参照値(観測開始から2008年までの累年平均値)と標準偏差及び最大値とともに示す。これらの図から、いずれも夏季を中心に紅班紫外線量が多くなる明瞭な季節変動がみられるとともに、日々大きく変動していることがわかる。図3.2.1.4は、2009年の上記3地点の日積算値の月平均値を参照値(観測開始から2008年までの累年平均値)とともに示したものである。これによれば、札幌では1、4、5、9月に多く、2〜3月と6〜7月に少なかった。特に、7月はその月として過去最少となった。つくばでは、ほとんどの月で「並」であったが4月と10月には多く、特に4月はその月として過去最多となった。那覇では、ほとんどの月で「並」か「多い」となり、特に1、2、5月はその月として過去最多となった。一方、10月は少なかった。
|
図3.2.1.1 札幌における紅斑紫外線日積算値の推移(2009年)。参照値(1991〜2008年の平均)とその標準偏差及び最大値を示す。 |
|
図3.2.1.2 つくばにおける紅斑紫外線日積算値の推移(2009年)。参照値(1990〜2008年の平均)とその標準偏差及び最大値を示す。 |
|
図3.2.1.3 那覇における紅斑紫外線日積算値の推移(2009年)。参照値(1991〜2008年の平均)とその標準偏差及び最大値を示す。 |
|
図3.2.1.4 国内3地点(札幌、つくば、那覇)における紅斑紫外線量日積算値の月平均(2009年)。●印は2009年の月平均値、実線は参照値(観測開始から2008年までの平均)、縦棒は参照値の標準偏差。 |
紅斑紫外線量の季節変動は、太陽高度角の変動に強く依存しているが、オゾン全量の変動にも依存している。同じ太陽高度角の春分と秋分頃を比較すると、秋分の方の紅斑紫外線量日積算値が多いのは春季よりも秋季にオゾン全量が少ないためである。日々の変動は主に天気(雲量や雲の状態)によるものである。また、つくばの平年値で2つ山の分布となっているのは、6月頃を中心に梅雨の影響で天気が悪く、その時期は平均的に紫外線量が少なくなっているためである。
気象庁における紫外線観測は世界でも先駆的に開始されたものであり、観測開始当初は精度を確認する手法が確立していなかった。そのため、紅斑紫外線量の経年変化の解析においては、札幌とつくばの一部期間について、全天日射量などの気象要素との比較検討に基づいて補正を施したデータを用いることとする。補正量は、札幌の1994年1月以前の期間では−5%、つくばの1997年12月以前の期間では+5%としてある。
図3.2.1.5に札幌、つくば、那覇における紅斑紫外線年積算値の推移を示す。各地点における経年変化のトレンド解析を行うと、地表に到達する紅斑紫外線量は、札幌を除き統計的に有意ではない(有意水準5%)ものの、長期的には緩やかな増加傾向を示している。
|
図3.2.1.5 国内3地点(札幌、つくば、那覇)における紅斑紫外線量年積算値の推移。直線は全期間の長期的な傾向(回帰直線)を示す。 |
上空のオゾン量が多いと、地表に到達する紫外線はオゾンによる吸収を強く受けて減少する。また、紫外線はエーロゾルによる散乱・吸収の影響を強く受け、雲の量や状態など天気にも大きく影響される。
1990年代初め以降、札幌、つくば、那覇の紅斑紫外線量には、いずれも長期的に緩やかな増加傾向が現れているが、同期間内にはオゾン全量に減少傾向がみられないことから(第3.1.1節参照)、この増加傾向の原因をオゾン量の変化に求めることはできない。このため、紅斑紫外線量の増加傾向は、エーロゾル量や天気傾向の変化が原因である可能性がある。
オゾン全量観測は、紫外線観測の開始以前から行っている。日本上空のオゾン全量は1980年代を中心に減少が進み、1990年代以降は1980年以前と比べて全般に少ない状態が続いている。このことから、1990年代以降の紅斑紫外線量は、エーロゾル量や雲量などに変化がないと仮定した場合、1980年以前と比較して増加しているものと推測される。オゾン全量の減少が大きい札幌とつくばの場合、オゾン全量の変化に起因する紅斑紫外線量の2009年での増加量は、札幌で3%程度、つくばで1%程度と推測される。