紫外線

3.2 紫外線

◆紫外線に関する基礎知識と人間への影響

 紫外線は、その波長域により、長波長側からUV-A(315〜400 nm)、UV-B(280〜315 nm)、UV-C(100〜280 nm)と分類されている。この中で、UV-Cは上空の酸素やオゾンなどによって完全に吸収されて地上には到達しない。UV-Aはオゾンによる吸収をほとんど受けないので、成層圏オゾンの量が変化しても対流圏に到達する量はほとんど変化しない。しかし、UV-Bはオゾンに吸収されやすく、成層圏のオゾン量によって対流圏への到達量が大きく変化する。
 UV-Bは日焼けを引き起こすだけでなく、皮膚の表皮を通過して真皮まで達し、細胞のDNAに損傷を与えたり、免疫機能を低下させたりすると言われている。その結果、皮膚ガンや白内障などを引き起こす恐れがある。また、動植物の生態系にも影響を及ぼすと言われている。このため、オゾン層破壊により地表に到達するUV-Bの増加が懸念されている。一方、UV-AはUV-Bに比べて皮膚への作用は弱いが、より深部にまで到達することが知られている。また、免疫抑制に関わっている可能性を示す報告も多い。

◆紫外線の気候への影響

 紫外線は対流圏の大気成分の変動にも影響する。対流圏に到達したUV-Bの一部は、対流圏に存在するオゾンに吸収されて励起状態の酸素原子を生成し、これが水蒸気と反応してOHラジカルを生成する。OHラジカルは、対流圏で多くの物質と反応し、対流圏の化学過程で大きな役割を果たしている。例えば、一酸化炭素などと反応して対流圏オゾン濃度に影響を及ぼすとともに、メタン、ハロカーボン類などの温室効果ガスの分解を通してそれらの濃度にも影響する(第2.6節参照)。そのため、気候変動の解明の上からも、紫外線の変動の把握は重要な課題である。

◆紅斑紫外線量とUVインデックスの定義

 紫外線の生物に与える影響度が波長によって異なることを考慮して、波長域全体としての影響の大きさを評価するために国際照明委員会(CIE)は皮膚に対する波長別相対影響度を表したCIE作用スペクトル(図3.2.1参照)を定義した。波長別の紫外線強度にCIE作用スペクトル(McKinlay and Diffey, 1987)の重みをかけて波長積分すると、生物に対する影響度の尺度で測られた紫外線量が得られる。これを紅斑紫外線量(CIE紫外線量)と呼び、この紅斑紫外線量を25 mW/m2で割って、指標化したものが、UVインデックスである。

紫外線のCIE作用スペクトル関数

図3.2.1 紫外線のCIE作用スペクトル関数。
Fig. 3.2.1 CIE erythema reference action spectrum.


◆紫外線量に影響を及ぼす様々な要因

 紫外線は日射の一部であるが、その減衰、散乱、地表面での反射などの性質は、日射一般(主に可視光)の性質とは異なる面がある。日射は一般に、大気分子、エーロゾル(大気中に浮遊する固体または液体の微粒子)、雲の吸収・散乱を受け、減衰しながら、直達光及び散乱光として地表に到達する。紫外線は、可視光に比べて吸収や散乱の効果を強く受け、特にオゾン層で強く吸収される。このため、大気圏外から地表に達するまでの強度の減衰率は、可視光に比べて大きい。また、日射全体に占める散乱光の割合は10〜20%程度であるが、紫外線の場合、散乱光の割合は50%以上に達するという特徴がある。
 地表における紫外線量には、上述した大気の状況が影響を及ぼしている。まず、紫外線の減衰の程度は、大気を通過する経路の長さに依存するので、太陽の高度は地表における紫外線量を決める重要な因子である。すなわち、日変化、季節変化する太陽高度は紫外線量の基本的な変動因子である。また、紫外線はオゾン層で強く吸収されるため、上空のオゾン量も、地表に到達する紫外線量に影響を与えている。日本の本州付近の夏の正午頃であれば、オゾン全量が1 m atm-cm減少すると紫外線はUVインデックスで約0.4%増加すると推定される。さらに、実際の紫外線量は、天気、すなわち雲量や雲の状態の影響を大きく受ける。厚い雲で全天が覆われている場合、紫外線量は快晴時の60%程度となる。しかし、太陽に雲がかかっておらず、かつ太陽の近くに積雲が点在しているような場合には、散乱光成分が多くなり、快晴時よりも紫外線の増加が観測されることもある。このほかにも、標高、エーロゾル量、地表面反射率などの変化も紫外線量の変動をもたらす要因である。より詳しい解説は、「オゾン層観測報告: 2009」(気象庁, 2010)に掲載している。


内容構成一覧

概要 | 話題 | 参考文献

日本における紫外線 | 日本におけるUVインデックス | 昭和基地での紫外線

オゾン層及び紫外線のGAW観測所 | 観測方法(紫外線) | 較正(紫外線)