オゾン層及び紫外線

3. オゾン層及び紫外線

 1970年代半ば、人工的に作り出された物質であるクロロフルオロカーボン類(CFCs)がオゾン層を破壊する可能性があることが指摘された(Molina and Rowland, 1974)。これはCFCsに含まれる塩素が上部成層圏のオゾンを破壊するというものである。これを契機としてオゾン層保護に関して世界的な関心が集まり、1985年にオゾン層の保護を目的とする国際協力のための基本的枠組みを設定する「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が、1987年にはオゾン層を破壊する恐れのある物質を規制するための「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、国際的なオゾン層保護の取り組みが進められた。
 モントリオール議定書では、締約国は、世界の専門家からなるパネルによって評価された最新の情報に基づいて、将来における議定書関連の政策決定を行うことが求められている。各国の政策決定過程に情報を提供するために、オゾン層の科学的理解の進展状況がこれまで1989、1991、1994、1998、2002、2006、2010年にWMO/UNEPの科学アセスメントとして公表されており、科学評価パネルがオゾン層の破壊の現状や見通しについての科学的な評価を与えている。
 当初、塩素によるオゾン層破壊は上部成層圏の現象と考えられていたが、オゾンホールの発見により、オゾン濃度(オゾン分圧)が最も大きい下部成層圏でも大規模なオゾン層破壊が生じることが明らかになった。このオゾンホールの発見や研究には、気象庁が行っている南極昭和基地での観測結果が大きな役割を果たしている。その後の観測で、下部成層圏のオゾン層破壊は北半球でも発生していることがわかった。このようなオゾン層破壊に関する新たな知見を踏まえて、モントリオール議定書によるオゾンを破壊する物質への規制は強化されてきた。これらの国際的な規制により、CFCsを始めとするオゾン層破壊物質は、第2.3節で示したように増加が止まっているか既に減少し始めている。しかし、大気中の滞留時間が長い物質もあるため、オゾンの少ない状態はなおしばらく続くとみられており、今後の推移を注視していく必要がある。

◆気象庁のオゾン層及び紫外線に関する取り組み

 気象庁は、1957年からオゾン層の観測を、1990年から紫外線の観測を国内及び昭和基地で実施して、その変動の監視に努めている。観測の結果は、GAWの世界オゾン・紫外線資料センター(カナダ・トロント)に報告され、地球全体の監視網の一翼を担っている。また、オゾン層破壊物質についても、岩手県綾里で1992年から観測を行っており、その結果は、第2.3節に記述している。さらに、気象庁では、国民が紫外線対策を有効に行えるように2005年からUVインデックスを用いた紫外線の観測情報、予測情報及び解析情報をホームページ等を通じて提供している。
 本報告では、気象庁が実施している観測の成果を中心に、衛星観測データなども用いて解析したオゾン層及び紫外線の状況について記述する。また、この中では、オゾンは他の気象要素における「平年値」と区別し、オゾンの変動を表すための基準として「参照値」(第3.1節参照)を定義し、用いることとする。
 なお、オゾン層及び紫外線の観測地点については第7.1.2節、観測方法については第7.2.7節から第7.2.10節で解説した。

参考文献

Molina, M. J., and F. S. Rowland, 1974: Stratospheric sink for chlorofluoromethanes: Chlorine atom catalyzed destruction of ozone. Nature, 249, 810.


内容構成一覧

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