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熱帯林地域からのメタン放出の観測「大気メタンの全球分布」の所で述べたように、現在の地上観測によるメタン観測点の世界配置は、北半球の放出源に対しては良いが熱帯域の放出源からの特徴を捉えにくい(Chen and Prinn, 2006)。近年衛星観測によって、これまでの観測による結果が、熱帯林からのメタン放出をかなり過小評価していることがわかってきた。これを確かめるために、最近アマゾン地域でメタンの地上観測が行われ、衛星観測の結果を裏付ける結果を得ている。Carmo et al.(2006)は、アマゾンの高地原生林の観測から最大で21 mg/日・m2、Miller et al.(2007)は、アマゾン川流域での観測から27 mg/日・m2のメタン放出を推定している。 |
エルニーニョ現象とメタン濃度年増加量との関係1998年、2002/2003年の濃度年増加量の上昇は、エルニーニョ現象にともなう全球的な高温が関連していると考えられている。1998年の高い濃度年増加量について、van der Werf et al.(2004)はほとんどは高温乾燥による火災からのメタンの放出を原因としている。しかし、Dlugokencky et al.(2001)は、高温と降水量の増加による北半球高緯度及び熱帯域の湿地からの放出量の増加を主な原因としており、Mikalove Fletcher et al.(2004)やChen and Prinn(2006)も湿地からの放出の増加を指摘している。Morimoto et al.(2006)も、ノルウェーのスバールバル諸島での同位体比の観測から、1998年のバイオマス燃焼による濃度増加は湿地の影響のほぼ半分と計算している。 |
最近のメタン濃度年増加量の変化1980年代には毎年10 ppb程度増加を続けていたメタン濃度は、1993年以降は、1998年を除き、大きな濃度年増加量は見られなくなっている。Lelieveld et al.(1998)は、濃度年増加量が1980年代より低下したことの原因を地球規模でのメタン放出量の減少によると指摘したが、Dlugokencky et al.(1998)やEtheridge et al.(1998)は、1980年代以降メタンの放出量に大きな変化はなく、その放出量に見合う定常状態の濃度に近づきつつあるためと説明している。 1999年以降2006年頃まで全球のメタン濃度年増加量は非常に低く、ほとんど増加は止まっているように見えていた。Fiore et al.(2006)は対流圏化学輸送モデルを使った実験により、この濃度年増加量の低下を温暖化による対流圏下層でのメタン分解反応の活発化と、メタンを分解するOHラジカル濃度の増加のためとしている。そのOHラジカル濃度の増加原因は、温暖化によって対流活動が活発化することによって雷放電(稲妻)の頻度が増加し、OHラジカル濃度に影響するNOx生成が増加するためと推定している。一方、Bousquet et al.(2006)によると、1990年代の濃度年増加量の減少は人為起源からの排出が減少したためであるが、1999年以降は人為的排出が増加しており、その分は湿地からのメタン放出減少により相殺されて増加が起こっていないと指摘している。この場合、もし湿地からの放出が1990年代のレベルに戻れば、再びメタンが増加する可能性がある。 このように、メタンの放出・消滅のメカニズムにはまだ不確定な部分が多く残っている。 上記のとおり、メタン濃度は1993年以降、濃度増加量の減少が見られていたが、2007年には1998年以来の大きな濃度増加を示し、2007年の全球平均濃度はそれまでに最高であった2003年の値を超えた。2008年以降、2000年代前半よりも大きな濃度増加が見られている。 2007年の濃度増加については、Rigby et al.(2008)は、シベリアでの持続的な高温により湿地からの放出が増えたことを主な原因と推定しており、また、メタンを破壊するOHラジカルが減少した可能性も指摘している。一方、Dlugokencky et al.(2009)は、2007年と2008年のメタン濃度の解析を行い、2007年の北半球高緯度の異常な高温状態に関連した北半球の湿地での放出の強化、2006年10月と11月の熱帯でのバイオマスの燃焼、2007年途中から始まったラニーニャ現象の影響によるインドネシアやアマゾン東部の多雨に伴う熱帯の湿地での放出の強化が濃度増加に寄与している可能性を示している。なお、2006年10月と11月の熱帯でのバイオマスの燃焼に関しては、メタンとCH3Cl、CH3CH3、COなどの濃度の変動の間に矛盾はないが、この濃度への影響は1997年や1998年に比べて小さいということも指摘している。 しかし、このような要因のうち何が今回の濃度増加に主に効いているのかはまだ明らかではなく、最近のメタンの増加傾向が今後も続くかどうかもはっきりしていない。 |
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