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総合診断表をご覧になる前に

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平成18年3月7日

 総合診断表では、一般の方にわかりやすいように、各節を統一した構成で記述し、可能な限り専門用語の使用を避け、使用する場合にも 本文や付録に説明を付した。
 ここでは、診断の分野、各節の構成、並びに総合診断表全体をつうじて重要なキーワードについて解説する。

1 診断の分野

 「総合診断表」は、地球環境問題の視点から海洋の現象をとらえ、「地球温暖化に関わる海洋の長期変化」、「気候に関連する海洋の変 動」、「北西太平洋の海洋汚染の状況」の三つの章を設けている。また、各現象ごとの診断の要約を本診断表の冒頭にまとめて記述する。 なお、これらの章に関わりの深い最近の研究成果や技術動向をコラムに記述している。

(1)地球温暖化に関わる海洋の長期変化(第1章)

 第1章のテーマは、地球環境問題で最も深刻な地球温暖化(地球環境問題としての地球温暖化は、人間活動による地表面付近の気温上昇を 指す)により海洋がどのように変化しているかを明らかにすることである。1.1節から1.3節では、海面水温(1.1節)、海面水位(1.2節)、 海氷(1.3節)の変化を診断する。また、1.4節では、地球温暖化の主な原因とされる二酸化炭素に着目する。

(2)気候に関連する海洋の変動(第2章)

 第2章のテーマは、数か月から十年規模で海洋がどのように変動しているか、さらには海洋が気候(大気を十分長い時間平均して導かれる 状態をいい、平均する時間をどの程度とするかは対象としている現象により異なる)にどのように関わっているのか明らかにすることであ る。2.1節では、北太平洋に着目し、海面水温・表層水温(2.1.1節)、表層水塊と呼ばれる海水の変動(2.1.2節)について診断する。2.2 節では、日本近海に着目し、海面水温・表層水温(2.2.1節)、黒潮(2.2.2節)、親潮(2.2.3節)、対馬暖流および日本海固有水といった 日本海の変動(2.2.4節)について診断する。2.3節では、気候に関連の深いエルニーニョ/ラニーニャ現象について診断する。

(3)北西太平洋の海洋汚染の状況(第3章)

 第3章のテーマは、日本周辺海域や北西太平洋における海洋汚染の状況を明らかにすることである。海洋汚染の原因は人間活動であり、地 球環境問題の重要課題の一つである。3.1節では固形ゴミである浮遊プラスチック類、3.2節では浮遊タールボール・油分、3.3節では生体内 に蓄積されやすく有害な重金属である水銀とカドミウムによる汚染の状況を診断する。

2 各節の構成

 各節は、診断の要点がわかりやすく、かつ必要に応じてより深く理解できるよう、次のような構成でまとめている。

診断概要
診断の背景や目的を診断内容に、診断の要約を診断結果にまとめている。
○○の基礎知識
診断を理解するにあたって必要な基礎知識、最新の研究成果、社会への影響などをまとめている。
○○の監視
気象庁による最新の観測・調査の結果をまとめている。
診断
最新の研究成果を踏まえて、最新の観測・調査の結果を気象庁の見解としてまとめている。

3 重要なキーワード

(1)診断

 「診断」という言葉は、通常、医療用語として用いられるが、「物事を調べて通常の状態と異なっていないかなどその状態を判断すること 」などの意味としても用いられる。「海洋の健康診断表」における「診断」という言葉もほぼ同じ意味であり、ここでは、「海洋の状況や変 動の原因、今後の見通し、地球環境との関連性などについて判断すること」を意味している。

(2)現象の変動と変化

 「変化」という言葉は、「ある物事がそれまでとは違う状態・性質になること」、「変動」という言葉は、「物事が変わり動くこと」であ るが、区別せず使用されることもある。ここでは、「変化」および「変動」という言葉を区別して使用し、「変化」という言葉は、ある期間 の初めから終わりにかけて、対象とする現象の要素が、どの程度の割合で増えたり減ったりしているのか評価する場合に使用する。また、「 変動」という言葉は、一定の期間内で、ある状態と異なる状態を交互に繰り返す現象についてその周期や振幅を評価する場合に使用する。

(3)現象の時間スケール

   現象の変化を評価する期間や、現象の変動における周期を時間スケールという。大気や海洋は、さまざまな時間スケールで変動している。 比較的短い時間スケールの変動には、地球の自転に関係する日変動、地球の公転に関係する季節変動のほか、低気圧の発達衰弱のように数 日規模の変動もある。年平均値などを時系列でみると、その値は毎年一定ではなく年ごとに変動していることがわかる。この変動を年々変 動という。また、1年よりも長い時間スケールで増減を繰り返すこともある。この変動をその時間スケールにより、数年規模の変動、十年 規模の変動などといい、本書では総称して長期変動ともいう。また、本書では十年規模よりも長い期間にわたる変化を長期変化といい、 その期間における増減の割合を長期変化傾向(トレンド)という。なお、本書で扱う長期変化の時間スケールは診断の対象や観測記録の有 無によって異なり、最長で百年程度である。

(4)自然変動と人為変動

 自然界にみられる現象の変化や変動の大部分は、人間活動に起因しない自然変動であると考えられる。一方、二酸化炭素などの温室効果 ガスの排出など人間活動が原因で起きている自然界の変化や変動を人為変動という。ただし、現象の起源を単純に人為変動と自然変動に分 類することは難しい。

(5)地球環境

 本書で扱う地球環境とは、「人間をとりまく地球の自然の全体」のことであり、いわゆる地球温暖化などの「地球環境問題」として取り 上げられる現象よりも広範な現象を対象としている。もちろん、海洋も地球環境の一部である。また、人間活動も含めた地球全体を科学の 対象として客観的にとらえる「地球システム」という言葉が使われ始めている。



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