English
サイトマップ サイト内検索 ご意見・ご感想
ホーム
防災気象情報
気象統計情報
気象等の知識
気象庁について
案内・申請・リンク
ホーム > 気象統計情報 > 海洋の健康診断表 > 総合診断表 > 2.2.4 対馬暖流および日本海固有水

2.2.4 対馬暖流および日本海固有水

本文 | 印刷用(PDF) | 更新履歴

第2章 気候に関連する海洋の変動
2.2 日本近海の海洋変動
2.2.4 対馬暖流および日本海固有水の要約はこちら
平成24年3月21日

診断概要

診断内容

日本海の表層には、対馬海峡から流入する高温の対馬暖流が南部を中心に、対馬暖流系の暖水より低温の海水が北部を中心に広がっている。また、日本海の約300m以深は、周辺の海と海水の交換がなく、水温や塩分がほぼ均質な日本海固有水で占められている。ここでは、冬季の日本海側に大量の降水をもたらす要因の一つとされる対馬暖流の長期変動と、地球温暖化の影響を受けやすいと指摘されている日本海固有水の形成状況について診断する。

診断結果

対馬暖流の勢力(100m深の水温が10℃以上の海域の面積)については、1985〜2010年の26年間では、1986年が最も弱く、それ以降は増大し、1990年代以降はおおむね平年(1985〜2010年の平均値)より強い状態が続いている。
日本海固有水については、1965年以降の観測結果から、大和海盆および日本海盆東部において、1000m以深の深層水や底層水にポテンシャル水温の上昇と溶存酸素量の減少がみられている。この傾向は、1990年以降顕著になっており、2000m深では、1990年以降のポテンシャル水温の上昇率は10年あたり0.02℃、溶存酸素量の減少率は10年あたり8〜10μmol/kgである。ポテンシャル水温の上昇と溶存酸素量の減少の原因は、新しい深層水が形成されにくい状況が続いているためと考えられる。

1 日本海の基礎知識

(1)日本海の海底地形

図2.2.4-1

図2.2.4-1 日本海の海底地形

水深は、米国海洋大気庁地球物理データセンター作成のETOPO5(緯度経度5分格子の標高・水深データ)による。

日本海は、アジア大陸と日本列島に囲まれた縁海で、平均水深は1667m(Menard and Smith, 1966)であるのに対し、隣接する海洋とは浅く狭い海峡でつながっている(図2.2.4-1)。海盆は、中央の大和堆と呼ばれる浅瀬によって、その北側の日本海盆と南東側の大和海盆に分かれている。また、大和堆から南には浅い隠岐海脚が連なっており、その西には対馬海盆がある。

(2)日本海の海洋構造の特徴

日本海の海洋構造は、約300m深を境に表層とそれ以深で分けることができる。さらに表層は、北緯40度付近を境に南部と北部に分けることができる。
南部の表層には、東シナ海の大陸棚斜面を流れる黒潮水を主な起源とし、対馬海峡を通って流入する高温・高塩分水(以下、暖水)が広がっている。その大部分は津軽海峡を通って太平洋に、一部は宗谷海峡を通ってオホーツク海に流出する。この暖水の流れが対馬暖流であり、南部の表層を高水温・高塩分の状態に維持している。北部の表層には、対馬暖流よりも低温・低塩分な海水(以下、冷水)が広がっている。暖水と冷水の境界となる北緯40度付近には、東西に延びる極前線と呼ばれる水温・塩分の不連続線が形成されている(図2.2.4-2)。


図2.2.4-2(1) 図2.2.4-2(4) 図2.2.4-2(2) 図2.2.4-2(3)

図2.2.4-2 100m深の水温の平年分布図(単位:℃)と極前線の平年の位置

左上:2月、右上:5月、左下:8月、右下:11月。海洋大循環モデルとデータ同化の解析結果による。平年値は1985〜2010年の26年平均値。白線は極前線の平年の位置で、100m深における月ごとの極前線の指標水温(重岡, 2010)を用いて位置を決定した。

図2.2.4-3

図2.2.4-3 定期的に観測を行っているPM線および大和海盆南西部(PM-5)、大和海盆北東部、日本海盆東部および日本海盆北東部の観測点の位置

PM線の北側は、1996年から青の実線に変更している。

一方、日本海の約300m以深は、日本海固有水と呼ばれる水温0〜1℃程度、塩分34.1程度のほぼ均質な海水で占められている。日本海は、その地形のため、周辺の海との海水交換が表層に限られており、日本海固有水は外洋から孤立している。
図2.2.4-4は、越前岬から北西に延びる観測定線(PM線;図2.2.4-3)における冬季と夏季の平均水温、および平均塩分の断面図である。北緯40度に近いPM-10付近の表層に水温・塩分の等値線が混み合う極前線が存在し、その南側に対馬暖流がもたらす暖水が、その北側に冷水が分布している。約300m以深には、水温が1℃以下の日本海固有水が分布している。
日本海では、春季から夏季には暖水側、冷水側ともに海面から昇温し、海面から数十mの深さまで明瞭な水温躍層(以下、季節躍層)が形成される。この季節躍層より浅い層では、水温の南北差が小さくなるため極前線は不明瞭となる。また、日本海固有水が占める約300m以深では、表層にみられる明確な水温・塩分の南北差がなく、極前線はみられない。海面付近に形成される季節躍層より深く日本海固有水よりも浅い表層であれば極前線は年間を通じてみることができ、北日本や朝鮮半島の近海を除くとおおむね北緯40度付近に位置し、対馬暖流が岸に沿って流れている北日本の近海ではおおむね岸と平行に位置している(図2.2.4-2)。


図2.2.4-4(冬:水温) 図2.2.4-4(冬:塩分) 図2.2.4-4(夏:水温) 図2.2.4-4(夏:塩分)

図2.2.4-4 PM線における冬季と夏季の水温(単位:℃)と塩分の平均分布

左上:冬季の水温、右上:冬季の塩分、左下:夏季の水温、右下:夏季の塩分。1972〜1988年の冬季および夏季の水温・塩分を平均した(舞鶴海洋気象台, 1990)。図中赤い点線で囲った等値線の混み合う箇所が、極前線を示している。

(3)対馬暖流

ア 流路

対馬暖流の流路は不連続で複雑な形状を示すことが多いが、対馬海峡や津軽海峡に近い海域では比較的安定した流路をとっている。
水温の分布において、水温の水平勾配が大きく等温線の間隔が狭くなっているところには、等温線に沿って水温が高い側を右にみる方向の流れが存在する。この流れは、等温線の間隔が狭いほど強い。対馬海峡から隠岐諸島に至る海域には等温線の間隔が狭くなっているところがあり、これとは別に、朝鮮半島の東側にも等温線の間隔が狭くなっているところがみられ、いずれも対馬暖流の流路に相当すると考えられる(図2.2.4-2)。対馬暖流の流路に相当する部分の水温の水平勾配を季節ごとに比べてみると、8月および11月は2月および5月に比べて大きく明瞭なことからわかるように、対馬暖流の流れは、冬季から春季に弱く、夏季から秋季に強いという季節変動をしている。

イ 流量

対馬海峡から日本海に流入する流量とその季節・経年変動については、海峡を挟む水位差や海底ケーブルの電圧差からの推定や、係留した流速計や船舶搭載の海流計によって直接測定するなど、さまざまな方法で見積もられている(Teague et al.,2002など)。Chang et al.(2004)は、これらの観測結果をまとめ、対馬海峡を通過する流量には季節変動があり、夏季から秋季にかけて大きいことを示した。Fukudome et al.(2010)は、船舶に搭載した超音波式ドップラー多層流速計による1997年2月〜2007年2月の観測結果から、対馬海峡を通過する流量は、平均すると2.65×106m3/sで、月平均の最大値は10月で3.10×106m3/s、最小値は1月で2.01×106m3/sであったとしている。
日本海中央部での対馬暖流の流量については、PM線での観測データから地衡流量を求めることができる。この海域には、直径数十〜百数十km程度の渦がしばしば存在することから、対馬暖流の流量は、日本側から極前線までの正味の北東向き流量(北東向きの全流量から、南西向きの全流量を差し引いたもの)となる。この流量にも、対馬海峡での通過流量と同様に夏季から秋季にかけて大きいという季節変動があり、1972〜2008年までの夏季から秋季の平均値は3.0±0.7×106m3/s(±は標準偏差)で、冬季から春季の平均値2.5±0.6×106m3/sより大きくなっている。欠測を含む年を除いた、1972〜2008年までの年平均値は2.8±0.7×106m3/sである。

ウ 気候への影響

対馬暖流によって供給された表層の暖水は、冬季に大気海洋間での熱と水の交換を経て大気に大量の水蒸気を供給しており、日本列島の日本海側に大量の降水をもたらしている。Hirose and Fukudome(2006)は、日本海側の冬季降水量とその直前の秋季における対馬暖流流量との間に、強い正の相関があるとしている。
また、日本海は、秋季から冬季にかけて大気に熱を供給し、我が国の気候を温和なものにしているが、対馬暖流は日本海に暖水を供給することで、日本海から大気に奪われる熱を補い海水温の低下を和らげている。

(4)日本海固有水

日本海固有水は、日本海の大陸に近い海域で、冬季に海面で強い冷却を受けて密度が大きくなった海水が、沈み込むことで形成されると考えられている。日本海固有水の分布する1000m深では、日本海固有水の溶存酸素量は隣接する北太平洋の海水と比べて明らかに多い(図2.2.4-5)。このことは、北大西洋や南極周辺の海域と同様に、日本海では酸素の豊富な海面の海水が、深層まで沈み込むことにより補給されていることを示している(Talley et al., 2006)。

図2.2.4-5

図2.2.4-5 北太平洋における1000m深の溶存酸素量の分布図

米国海洋大気庁海洋データセンター作成のWorld Ocean Atlas 2009の年平均気候値データ(Garcia et al., 2010)を単位変換した。薄い灰色の部分は、水深が1000mより浅い海域を示す。

ア 深さによる分類

これまで日本海固有水は均質であると考えられていたが、今日では深さによってポテンシャル水温や溶存酸素量などの水質が異なり、大きく三つに分類できることがわかっている。Senjyu and Sudo(1994)は、1964〜1985年に観測されたポテンシャル水温、塩分、溶存酸素量、リン酸塩濃度などの鉛直分布から、約800〜1000m深のポテンシャル密度27.34σθ(=1027.34kg/m3)を境にして、日本海固有水が上部日本海固有水と深層水に分けられ、上部日本海固有水は深層水より溶存酸素量が多いことで特徴付けられるとしている。また、Gamo and Horibe(1983)は、日本海盆および大和海盆でのポテンシャル水温、溶存酸素量、ケイ酸塩濃度の鉛直分布から、約2000m深付近を境にして深層水と底層水に分けられ、底層水は水温が鉛直方向に一様であるとし、Gamo et al.(1986)は、深層水には溶存酸素量の極小層が存在するとしている。

イ 形成域と循環

図2.2.4-6

図2.2.4-6 日本海固有水の形成域と深層循環の模式図

日本海の海底地形(図2.2.4-1)に日本海固有水の形成域と深層循環の模式図を重ねた。四角の枠で囲まれた海域は上部固有水の形成域、楕円で囲まれた海域は深層水・底層水の形成域、曲線および矢印は2000m以深の主な深層循環の経路を示す(Senjyu et al., 2005aなどをもとに作成)。

上部日本海固有水の形成域については、北緯40〜43度の東経136度以西の海域と考えられている(Senjyu and Sudo, 1994)。また、深層水・底層水の形成域については、上部日本海固有水の形成域の中でも、より深くまで沈み込みが起こる、ウラジオストク沖の海域と考えられている(Sudo, 1986; Seung and Yoon, 1995など)。
日本海固有水の水平方向の循環については、水温・化学成分の水平分布や直接測流の結果などから推定されている。上部日本海固有水の循環経路について、Senjyu and Sudo(1994)は、形成域から日本海盆西部・大和堆西方を経て大和海盆に入るとしている。一方、深層について、Senjyu et al.(2005a)は、主に係留観測の結果から、日本海全体で海盆の縁に沿って反時計回りに循環するとともに、日本海盆・大和海盆のそれぞれの海盆でも反時計回りの循環をしていると推定している。また、底層について、Senjyu et al.(2005b)は、大和海盆と日本海盆におけるポテンシャル水温と溶存酸素量の底層付近の分布から、大和堆東方の海底付近で日本海盆から大和海盆への流れの存在を示唆している。

ウ 長期変化

長期にわたる観測結果から、日本海固有水のうち、1000m以深の深層水や底層水について、ポテンシャル水温の上昇と溶存酸素量の減少が起こっており、これらの変化に伴って深層水や底層水の鉛直分布の特徴も変化していることが明らかになっている。例えば、Minami et al.(1999)は、日本海盆東部(1965〜1996年)と大和海盆(1958〜1996年)における2500m深での変化は、ポテンシャル水温で10年あたり0.002〜0.004℃の上昇、溶存酸素量で10年あたり5.5〜7.2μmol/l(5.3〜6.6μmol/kgに相当)の減少であることを示しており、Gamo et al.(1986)は、1969〜1984年に観測された日本海盆東部および大和海盆での溶存酸素量の鉛直分布から、深層水における酸素極小層の深さは次第に深くなるとともに不明瞭になってきていること、深層水と底層水の境界の深さは次第に深くなってきており、底層水の体積が減少傾向にあることを示している。
日本海固有水の深層水・底層水のポテンシャル水温が上昇し、溶存酸素量が減少している原因としては、深層水・底層水の形成量の減少が考えられている。深層水・底層水の形成量が減少し、低温で酸素が豊富な新しい海水が深層に供給されなくなると、上層からの熱の拡散などによってポテンシャル水温は上昇し、バクテリアが有機物(生物の死骸や糞など)を分解する過程で酸素を消費することから溶存酸素量は減少することが考えられる(Minami et al., 1999; Gamo, 1999など)。
日本海固有水の底層水の形成状況について、2001年2月には形成域で新しい底層水が沈み込む様子が初めて観測され(Talley et al., 2003)、2001年の春季から夏季にかけて形成域付近の日本海盆で新しい底層水の形成による溶存酸素量の増加などが示されている(Kim et al., 2002; Senjyu et al., 2002など)。しかし、形成域に近いウラジオストクの気温が2001年冬季のように著しく低くなった厳冬は、1960〜2000年では、1960年代と1970年代に1度ずつに限られており(Talley et al., 2003; Kumamoto et al., 2008など)、1960年代以降、底層水の形成が停止あるいは弱まった状態が続いていると考えられている(Kim et al., 2004)。
このような日本海固有水の長期変化の状況については、気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書(IPCC,2007)でも報告されている。また、同報告書では、日本海固有水は他の海洋と隔離された閉鎖的な海盆に存在しているために、地球温暖化の影響を受け易いことが指摘されている。
Kang et al.(2004)は、単純化した数値モデルを用いることにより、底層水の形成が停止あるいは弱まった状況が今後も継続すると、2040年には底層水の性質を持つ水がみられなくなると予測している。また、Gamo(1999)は、現在の状況が今後も継続して溶存酸素量が低下し続けるなら、今後数百年のうちに、日本海の底層は最終氷期と同様に無酸素状態になると指摘している。


2 対馬暖流および日本海固有水の診断

(1)診断に用いるデータ

対馬暖流の勢力の指標として、海洋大循環モデルとデータ同化の解析結果による、日本海全域における100m深の水温が10℃以上の海域の面積を診断に用いた。また、対馬暖流の流量の診断については、舞鶴海洋気象台が1972年冬季から2009年冬季まで各季節に観測していたPM線(図2.2.4-3)の水温・塩分から求めた地衡流量を用いた。
一方、日本海固有水の診断には、大和海盆南西部(PM-5)、大和海盆北東部、日本海盆東部および日本海盆北東部の観測点(図2.2.4-3)でのポテンシャル水温、溶存酸素量を用いた。

(2)対馬暖流の変動状況

1985年以降の対馬暖流の勢力の時系列を図2.2.4-7に示す。期間内の対馬暖流の勢力は1986年に最も弱く、その後1980年代末にかけて勢力を大きく増した。1990年以降は1996年や2006年に極小値を示したもののおおむね勢力の強い状態が継続している。

図2.2.4-7

図2.2.4-7 対馬暖流の勢力の経年変動(1985〜2010年)

海洋大循環モデルとデータ同化の解析結果による、100m深の水温が10℃以上の海域の面積時系列。図中の赤線が月の実況を、黒丸(●)が実況の年平均値を示している。青線は1985〜2010年の過去26年間の平均値を示す。濃い緑は、「平年並」の範囲をあらわしている。ここでは、「平年並」の範囲を、1985〜2010年の26年間に出現した月ごとの対馬暖流の勢力の、上位1/3および下位1/3の事例を除いた範囲と定義している。薄い緑は、1985〜2010年の26年間に出現した、上位1/10および下位1/10を除いた範囲を示している。

PM線を横切る対馬暖流の地衡流量の経年変動を図2.2.4-8に示す。流量は、1970年代半ばから1980年代半ばにかけて減少傾向にあり、最小値を記録した1985年の年平均値は平年より1.3×106m3/s少なかった。その後、流量は平年並まで増加し、1990年以降は2009年までおおむね平年並あるいは平年より多い状態が続いた。

図2.2.4-8

図2.2.4-8 PM線を横切る対馬暖流の地衡流量の経年変動(1972年冬季〜2009年冬季)

黒線は観測値、赤線は年平均値。青線は年平均値の平年値(1981〜2008年の平均値)。

(3)日本海固有水の変動状況

図2.2.4-9は、大和海盆南西部(PM-5)での500〜2500m深のポテンシャル水温と溶存酸素量の鉛直分布を、1970〜1979年と2000〜2009年の二つの期間について10年平均したものである。
ポテンシャル水温は、30年間で全層とも上昇しており、上部日本海固有水の800m深では0.12℃、深層水の2000m深では0.03℃上昇している。
溶存酸素量は、全層で減少しており、1000m以深では、深くなるほど減少量が大きくなっている。30年間の減少量は、上部日本海固有水の800m深では12μmol/kg、深層水の2000m深では20μmol/kgである。また、1970〜1979年の平均値には1000〜1200m深に深層水の特徴の一つである酸素極小層がみられるが、2000〜2009年の平均値にはみられなくなり、深層水の性質に変化がみられている。

図2.2.4-9(1) 図2.2.4-9(2)

図2.2.4-9 大和海盆南西部(PM-5)におけるポテンシャル水温(左)、溶存酸素量(右)の鉛直分布

青三角()は1970〜1979年の平均値、赤丸()は2000〜2009年の平均値。

図2.2.4-10は、大和海盆南西部(PM-5)、大和海盆北東部、日本海盆東部および日本海盆北東部での、上部日本海固有水の800m深と深層水の2000m深におけるポテンシャル水温と溶存酸素量の時系列である。なお、ここでは1年間の観測値を平均したものを示してある。
ポテンシャル水温は、いずれの点においても、800m深、2000m深ともに上昇傾向を示しており、この傾向は1990年以降顕著になっている。日本海盆北東部の800m深のポテンシャル水温は他の3点に比べて0.05℃程度高いが、2000m深ではいずれの点においても大きな差はない。データ期間の短い日本海盆北東部を除くと、1990年以降のポテンシャル水温の上昇率は10年あたり、800m深で0.06〜0.08℃、2000m深で0.02℃となっている。
日本海固有水の形成域により近いと考えられる日本海盆東部および日本海盆北東部の溶存酸素量は、大和海盆南西部(PM-5)および大和海盆北東部の同じ水深に比べて高濃度である。800m深の溶存酸素量は、1970年代は減少傾向、1980年代は増加傾向、その後は減少傾向となっている。2000m深では、両海域ともに減少傾向を示しており、データ期間の短い日本海盆北東部を除くと、1990年以降の減少率は10年あたり8〜10μmol/kgである。
約20年ないしそれ以上の期間のデータがある、大和海盆南西部、大和海盆北東部、日本海盆東部のいずれにおいても同様な変化傾向がみられることから、これらの変化傾向は日本海盆東部から大和海盆にかけての広い範囲で起きている現象であると考えられる。

図2.2.4-10(1)

図2.2.4-10(2)

図2.2.4-10 大和海盆南西部(PM-5)、大和海盆北東部、日本海盆東部および日本海盆北東部における800m深と2000m深のポテンシャル水温と溶存酸素量の経年変動(1965〜2011年)

(a)800m深のポテンシャル水温、(b)800m深の溶存酸素量、
(c)2000m深のポテンシャル水温、(d)2000m深の溶存酸素量。

3 診断

対馬暖流の勢力(100m深の水温が10℃以上の海域の面積)については、1985〜2010年の26年間では、1986年が最も弱く、それ以降は増大し、1990年代以降はおおむね平年より強い状態が続いている。
日本海固有水については、1965年以降の観測結果から、大和海盆および日本海盆東部において、1000m以深の深層水や底層水にポテンシャル水温の上昇と溶存酸素量の減少がみられている。この傾向は、1990年以降顕著になっており、2000m深では、1990年以降のポテンシャル水温の上昇率は10年あたり0.02℃、溶存酸素量の減少率は10年あたり8〜10μmol/kgである。ポテンシャル水温の上昇と溶存酸素量の減少の原因は、新しい深層水が形成されにくい状況が続いているためと考えられる。

参考文献



本文 | 印刷用(PDF) | 更新履歴

印刷用(PDF)



本文 | 印刷用(PDF) | 更新履歴

更新履歴

内容更新

用語改正



2.2.3 親潮 <<前へ | 次へ>> 2.3 エルニーニョ現象


このページのトップへ
Adobe Reader このサイトには、Adobe社Adobe Readerが必要なページがあります。
お持ちでない方は左のアイコンよりダウンロードをお願いいたします。