キーワードを入力し検索ボタンを押下ください。

海洋の炭素循環

地球上の炭素は、大気中の二酸化炭素、陸上の生物体や土壌中の有機物、海水や河川・湖沼に溶けている二酸化炭素や有機物及び粒子状の有機物、石灰質の岩石や堆積物、化石燃料など、様々な場所、様々な形で存在しています。大気、陸上(森林・土壌・河川及び湖沼など)、海洋、地圏(岩石や堆積物)をそれぞれ炭素の貯蔵庫とみなし、炭素がこれらの貯蔵庫間を交換・移動することにより形成される循環を「炭素循環」と呼んでいます。

海洋は、陸上から河川を通じて炭素を受け取ります。海面では大気との間で二酸化炭素が交換されます。海洋の循環に伴って表層の海水と深層の海水の間でも炭素のやり取りが行われます。海底では堆積物として沈殿します。また、海水中の二酸化炭素が光合成により有機物として海洋生物に取り込まれ、一方では有機物が分解されて二酸化炭素に無機化されます。これが海洋の炭素循環であり、地球上の炭素循環の一部を形成します。

産業革命以前の炭素循環

最終氷期が終了した約1万年前以降、大気中の二酸化炭素濃度の変化は小さく(~20ppm)、その変化速度もゆっくりとしたものでした。炭素循環もおおよそ定常状態であったと考えられています。陸上では、森林の光合成により大気中の二酸化炭素が有機物として取り込まれるとともに、有機物が土壌から河川へと流れ出し、海洋や湖沼を通じて大気へと放出されて均衡が保たれていました。海洋では、河川を通じて1年あたり約9億トンの炭素が流れ込むとともに、2億トンの炭素が堆積物として沈殿し、7億トンが大気中へ二酸化炭素として放出されることにより均衡が保たれていました。

産業革命以降の炭素循環

産業革命以降(1750年~)、工業化の進展に伴い、多くの二酸化炭素が大気中へ排出されるようになりました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(2013年)では、化石燃料の燃焼及びセメント製造により排出される二酸化炭素と、農地拡大等による土地利用変化(森林破壊)により排出される二酸化炭素をあわせて、人為起源二酸化炭素と呼んでいます。2000年代の平均で、1年あたりおよそ90億トン炭素の人為起源二酸化炭素が排出されており、産業革命以降の積算では5550億トン炭素に上ります。

大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い、陸上では、森林の光合成活動が活発になり、より多くの二酸化炭素を吸収するようになりました。土地利用変化による排出を差し引くと、産業革命以前に比べ、1年あたり15億トン炭素(2000年代平均)吸収量が増加し、森林や土壌に蓄積されています。

同じように、海洋は大気から二酸化炭素を吸収するようになりました。その量は、産業革命前からの増加量でおよそ23億トン炭素(2000年代平均)とされています。吸収された二酸化炭素は、海洋の循環に伴い、より深い海へと運ばれていきます。表層では、生物活動、特に植物プランクトンの光合成によって二酸化炭素が有機物として取り込まれ、これら生物の死骸や排泄物が沈降・分解し、海洋内部へと運ばれます。海洋の生物によって炭素が海洋内部へと運ばれるこの働きは、「生物ポンプ」と呼ばれています。産業革命以降、2000年代までにおよそ1550億トン炭素が海洋中に蓄積されています。

このように、人為起源二酸化炭素は、大気中に排出されたのち、海洋や陸上の吸収源に吸収されますが、残りは大気中にとどまります(図1;表1)。大気中に蓄積された二酸化炭素は温室効果を増大させ、地球温暖化を引き起こします。一方で、海洋は、二酸化炭素を吸収することによってpHが低下し、海洋酸性化が進行しています。

人為起源炭素収支の模式図

図1 人為起源炭素収支の模式図(2000年代)

IPCC(2013)をもとに作成。各数値は炭素重量に換算したもので、黒の矢印及び数値は産業革命前の状態を、赤の矢印及び数値は産業活動に伴い変化した量を表しています。2000~2009年の平均値を1年あたりの値で表しています。

表1 人為起源炭素収支
1750~2011年総計1980~1989年1990~1999年2000~2009年2002~2011年
人為起源二酸化炭素
排出源
化石燃料燃焼及び
セメント製造
3750±30055±464±578±683±7
土地利用変化1800±80014±816±811±89±8
二酸化炭素吸収源 陸域生態系による
吸収
1600±90015±1127±1226±1225±13
海洋による吸収1550±30020±722±723±724±7
大気中二酸化炭素増加量
(=排出源−吸収源)
2400±10034±231±240±243±2

1750年(産業革命のはじまり)~2011年までの総計及び1980・1990・2000年代における人為起源二酸化炭素収支。±は90%信頼区間を示しています。単位は億トン炭素で、10年ごとの列の数値は1年あたりの値です。IPCC(2013)Table 6.1をもとに作成。

参考文献

  • IPCC (2013): Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.

このページのトップへ