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ホーム > 気象統計情報 > 地球環境・気候 > IPCC(気候変動に関する政府間パネル) > IPCC第三次評価報告書の要約(気象庁訳)

IPCC第三次評価報告書〜第一作業部会報告書 気候変化2001 科学的根拠
政策決定者向けの要約(気象庁訳)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第一作業部会による第三次評価報告書は,これまでに公表された評価報告を踏まえた上で,気候変化に関する過去5年間の調査研究から得られた新たな成果を取りこんでいる(脚注1)。同報告書のとりまとめと査読には,多くの国から数百人の科学者(脚注2)が参加した。

この政策決定者向けの要約(SPM)は,2001年1月に上海において,各国政府によって承認されたものであり(脚注3),気候システムに対する理解の現状を述べるとともに,予測される将来の変化とその不確実性の見積もりを示したものである。詳細は,この要約の元になる報告書本文に記述されている(出典注釈により,報告書本文の引用箇所を示す)。

観測成果が増えたことによって,気候システムにおける温暖化しつつある世界及びその他の変化についての全体像が明らかになっている。

第二次評価報告書の公表以降,現在及び過去の気候に関する新たな研究によりもたらされたデータ,データ解析の進歩,データに関するより厳密な品質評価及び異なる出所からのデータ間の比較を通じて,気候変化に関する理解が大きく進展した。

地球の平均地上気温は,20世紀に約0.6℃上昇した。

図SPM-1

気温は,高さ8kmまでの大気において,過去40年間上昇してきた

雪氷面積は減少している。

地球の平均海面水位は上昇し,海洋の貯熱量は増加した

変化は,気候におけるこれ以外の主要な側面にも現れている

気候における主要な側面のいくつかは変化していないように見える

人間活動による温室効果ガス及びエーロゾルの排出は引き続き大気を変化させ,気候に影響を与える

 気候の変化は,気候システム内部の変動と外部因子(自然起源と人為起源の両者)により起こる。気候に対する各外部因子の影響については,放射強制力という概念を使っておおよそ比較しうる(脚注8)。温室効果ガス濃度の増加などによって生じる放射強制力は,正の値を持ち,地表を暖める方向に働く。ある種のエーロゾルの増加によって生じる放射強制力は負の値を持ち,地表を冷やす方向に働く。太陽放射の変化や火山噴火のような自然起源の因子も放射強制力をもたらす。これらの気候の変動因子及びその時間変化を特徴づけること(図SPM-2参照)が自然の変動と関連させて過去の気候変化を理解し,将来起こりうる気候変化を予測するためには、必要である。図SPM-3は,大気組成物質の濃度増加及びその他のメカニズムによる放射強制力の現在の見積もりを示す。

図SPM-2

人間活動に伴い,大気中の温室効果ガスの濃度及びその放射強制力は増加を続けている

人為起源のエーロゾルは短寿命であり,大部分は負の放射強制力をもたらす

図SPM-3

自然起源の因子は,過去100年間では放射強制力にあまり影響していない

将来の気候を予測するモデルの能力の信頼性が増してきた

 フィードバックと地域的特徴を詳細に見積もるために,物理に基づいた高度な気候モデルが必要である。そのような気候モデルは,気候のすべての側面を再現できるわけではなく(例えば,地上−対流圏温度差について,観測された1979年以降のトレンドを未だ十分に説明できない),とりわけ,雲,そして雲と放射やエーロゾルとの相互作用に関しては不確実性がある。それにもかかわらず,気候モデルが一定の空間及び時間スケールで気候を一定の性能で復元したことから,将来の気候に関する有用な予測を提供するモデルの能力に対する信頼度は,改善されてきている。

図SPM-4

近年得られた,より確かな事実によると,最近50年間に観測された温暖化のほとんどは,人間活動に起因するものである

 第二次評価報告書では,「事実を比較検討した結果,識別可能な人為的影響が地球全体の気候に現れていることが示唆される」と述べられた。同報告書はまた,人為起源のシグナルは,依然として自然起源の気候変動というバックグランドから読み取れる程度のものであると述べた。同報告書の公表以降,特に,異なる外的影響に対する応答を識別し定量化することに関して不確実性が減少した点で進歩があった。同報告書で確認された不確実性の多くは,いまだにある程度残っているものの,最新の結論は,新たな事実と理解の進展によって裏付けられている。

新しい事実に照らすと,残された不確実性を考慮しても,過去50年間に観測された温暖化の大部分は,温室効果ガス濃度の増加によるものであった可能性が高い(脚注7)

さらに,20世紀の温暖化は,海水の熱膨張と陸氷の広範な消失により,観測された海面水位上昇にかなり寄与した可能性がかなり高い(脚注7)。現在,観測データとモデルによる予測とは,20世紀の海面水位上昇に顕著な加速が見られないことについて,様々な不確実性の範囲内で矛盾していない。

21世紀を通して,人間活動が大気組成を変化させ続けると見込まれる

IPCC排出シナリオに関する特別報告書(SRES)に掲載された排出シナリオをもとに,モデルを使用して,温室効果ガスとエーロゾルの大気中濃度,さらには将来の気候について予測を行った(図SPM-5)。SRESシナリオは,第二次評価報告書で用いられたIS92シナリオに最新の状況を反映させたもので,図SPM-5では,比較のためにIS92シナリオによる予測が示されている。

図SPM-5

温室効果ガス

エーロゾル

21世紀における放射強制力

地球の平均気温と平均海面水位は,IPCC SRESシナリオにもとづく予測結果のすべてにおいて,上昇する

将来の気候の予測においては,モデルは将来ばかりでなく過去の温室効果ガスとエーロゾルの排出を取りいれている。したがって,予測結果は,現在までの温暖化の見積もりと過去の排出が将来の温暖化に及ぼす影響をも含んでいる。

気温

降水量

極端な現象

表1は,気象や気候の極端な現象について,20世紀後半に観測された変化(左欄)と21世紀に予測される変化(右欄)の信頼度を評価したものであるa。この評価は,よく使われるシナリオのすべてに対して将来予測の物理的な妥当性だけではなく,観測データの解析やモデルの研究成果にも基づいており,さらに専門家の判断に基づいている(脚注7)

表1 極端な現象について,観測された変化と予測される変化の信頼度の見積もり
観測された変化の信頼度(20世紀後半) 現象の変化 予測される変化の信頼度(21世紀)
可能性が高い ほとんどすべての陸域で最高気温が上昇し,暑い日が増加する 可能性がかなり高い(脚注7)
可能性がかなり高い(脚注7) ほとんどすべての陸域で最低気温が上昇し,寒い日,霜が降りる日が減少する 可能性がかなり高い(脚注7)
可能性がかなり高い(脚注7) 大部分の陸域で気温の日較差が縮小する 可能性がかなり高い(脚注7)
多くの地域で可能性が高い(脚注7) 陸域で熱指数(heat index(脚注12))が大きくなる ほとんどの地域で可能性がかなり高い(脚注7)
北半球の中・高緯度の陸域の多くで可能性が高い(脚注7) 強い降水現象が増加するb 多くの地域で可能性がかなり高い(脚注7)
可能性が高い(脚注7)地域もある 夏の大陸で乾燥しやすくなり,干ばつの危険性が増加する 干ばつの危険性が増加する 中緯度の大陸内部の大部分で可能性が高い (脚注7)(その他の地域では,一致した予測となっていない)
入手可能なわずかな解析では観測されていない 熱帯低気圧の最大風速が増大するc いくつかの地域で可能性が高い(脚注7)
評価するに十分なデータが存在しない 熱帯低気圧に伴う平均降水量と最大降水量が増加するc いくつかの地域で可能性が高い(脚注7)

a 詳細は第2章(観測),第9,10章(予測)を参照。
b その他の地域では,十分なデータが存在しないか,矛盾した解析結果が出ている。
c 熱帯低気圧の位置や発生頻度についての,過去や将来の変化は不確実である。

エルニーニョ現象

モンスーン

 温室効果ガス濃度の増加に伴う温暖化で,アジア域の夏のモンスーンの降水量の変動は大きくなる可能性が高い(脚注7)。モンスーンの平均的な期間の長さや強度の変化は,排出シナリオによって異なる。このような予測の信頼度は,モンスーンの季節的な進行の細部が気候モデルで適切に復元できるかどうかによっても影響を受ける。

熱塩循環

 大部分のモデルによると,海洋の熱塩循環が弱まり,そのため,北半球の高緯度への熱の輸送が小さくなる。しかしながら,たとえ熱塩循環が弱まったモデルでも,ヨーロッパは温室効果ガス濃度の増加のため温暖化する。気候モデルを使った現在の予測では,2100年までに熱塩循環が完全に停止することは示されていない。2100年以降,放射強制力の変化が十分大きく,かつ十分長期間にわたるとなると,熱塩循環はどちらの半球でも完全に停止し,再び循環が起きることはないと考えられる。

雪氷

海面水位

人為起源の気候変化は,今後何世紀にもわたって続くと見込まれる

さらに活動を重ね,気候変化に関する情報や理解の空白を埋めなければならない

気候変化の検出,原因特定及び理解の能力を向上させ,不確実性を減らし,将来の気候変化を予測するために,さらに研究を進めることが必要である。特に,新規の組織的かつ持続的な観測と気候モデル及び気候の諸過程に関する研究が必要である。観測ネットワークの衰退が深刻に懸念されている。高い優先度で取り組むべき分野を以下に挙げる。

これらの焦点的事項に横断的にいえることは,科学,計算機及び観測資源をより良く利用するために国際的な協力や調整を強化する必要性が極めて高いことである。科学者間の無料・無制限なデータ交換もまた促進すべきである。多くの地域,特に開発途上国において,観測及び研究に関わる能力を向上させることが特に必要である。終わりに,この評価報告書の目指すところでもあるが,研究の進展はいつも政策決定に資する表現で周知する必要がある。

排出シナリオに関する特別報告(SRES)の排出シナリオ

脚注一覧

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