ホーム |
防災気象情報 |
気象統計情報 |
気象等の知識 |
気象庁について |
案内・申請・リンク |
月平均気温と月降水量および日最高/最低気温、日降水量の異常値から、日本の異常気象の長期的な変動の実態を説明する。異常気象の算出方法等についての詳細は(3)に記した。
解析に用いた地点は、気温17地点、降水量51地点である(図1.3.1および表1.3.1)。
気温に関しては、月平均気温、日最高・最低気温の異常値の解析のほか、人間の健康に大きく影響する指標の一つとして、熱中症が発生し始めるとされる日最高気温が30℃以上(真夏日)、および熱中症が急増するとされる35℃以上の日数の経年変化を求めた(熱中症と日最高気温の関連は安藤ほか(2002)による)。
降水量に関しては、特に強い降水の長期変化が社会的に関心の高いテーマであり、表1.3.2の例に示すように、日本を対象にしていくつかの研究がなされている。このうちのいくつかは近年に強い降水の多い傾向を指摘している。しかし、これまでは電子媒体で提供されるデータに限りがあり、研究対象となる地域や期間、データの種類にさまざまな制約があった。
そこで今回、1901年以降の均質な観測データのある51地点の日降水量について品質管理を行い、従来の月降水量の異常値のほか、長期的な日降水量の異常値の変動について解析を行うこととした。
日降水量については四つの指標を用いて解析した。すなわち、@異常気象の定義に沿った30年に1度程度の極端な大雨の出現数の経年変化、A地域により異なるがおおよそ大雨注意報基準に相当する日降水量100mm以上の日数と、B大雨警報基準に相当する同200mm以上の日数の経年変化を求めた。これはわかりやすい指標ではあるが、一方で季節的には夏に多く、地域的には南西諸島で多いといった特徴がある。そこで季節や地域に偏らない指標として、C地点ごと・月ごとに定義した日降水量の階級区分を利用した結果もあわせて示した。これは、端的にいえば「それぞれの季節や地域に応じた大雨の割合が増えているか」を知る指標といえる。
| 地域 | 地点名 |
|---|---|
| 北日本 | 網走、根室、寿都、山形、石巻 |
| 東日本 | 伏木、長野、水戸、飯田、銚子 |
| 西日本 | 境、浜田、彦根、宮崎、多度津 |
| 南西諸島 | 名瀬、石垣島 |
気温:17地点
| 地域 | 地点名 | |
|---|---|---|
| 北日本 | 太平洋側 | 網走、帯広、根室、宮古、石巻、福島 |
| 日本海側 | 旭川、札幌、寿都、秋田、山形 | |
| 東日本 | 太平洋側 | 長野、宇都宮、高山、松本、前橋、熊谷、水戸、岐阜、名古屋、飯田、甲府、津、浜松、東京、横浜 |
| 日本海側 | 伏木、福井、敦賀 | |
| 西日本 | 太平洋側 | 京都、呉、神戸、大阪、和歌山、鹿児島、宮崎、松山、多度津、高知、徳島 |
| 日本海側 | 境、浜田、彦根、下関、福岡、大分、長崎、熊本 | |
| 南西諸島 | 名瀬、石垣島、那覇 | |
降水量:51地点
太平洋側・日本海側の区分は、第2章で使用
| 著者 | 対象期間 | データ源,対象要素 | 結果 | |
|---|---|---|---|---|
| Iwashima and Yamamoto (1993) | 55 | 1890〜1990 | 降水の累年極値(各地点の歴代上位3件) | 極値は1940年代以降に多い。 |
| 梶原ほか (2003) | 18 | 1900〜1999 | 日降水量(11の強度階級) | 強い降水は増加,弱い降水は減少。 総降水量はやや減少。 |
| 鈴木(2004) | 18 | 1950〜2003(5〜9月) | 1〜24時間降水量 | 強い降水(再現期間2年以上)は1950〜60年代前半と1990年以降に多い。 |
| 高橋(2003) | 1 (東京) | 1886〜1999(6〜9月) | 日降水量(5つの強度階級) | 強い降水の寄与(総降水量に対する比率)は1940年代と1980年代以降に高い。 |
| Kanae et al.(2004) | 1 (東京) | 1890〜1999 | 1時間降水量 | 強い降水の強度・頻度は1940年代ごろと1990年以降に高い。 |
1)月平均気温の異常値の出現数の経年変化
図1.3.2に、1901〜2004年の104年間での月平均気温の高いほうから1〜3位(異常高温)の出現数と、低いほうから1〜3位(異常低温)の出現数を、表1.3.3に異常高温・異常低温の出現数の長期変化傾向をそれぞれ年と季節別に示す。20世紀初頭と最近でどの程度、異常高温や異常低温の出現しやすさが違ってきているかを数値的にわかりやすくするため、表には1901〜1930年と1975〜2004年のそれぞれ30年間における異常気象の出現数の合計の比もあわせて示した。表1.3.3に示したように、異常高温の出現数は、年、季節を問わず有意に増加しており、異常低温の出現数は年および夏と秋の季節で有意に減少している。年間の異常気象の出現数は、20世紀初頭の30年間に比べて、最近の30年間は、異常高温が5.8倍に増えた一方、異常低温は約3割までに減少した(表1.3.3のカッコ内)。
年、季節ともにおおむね有意な異常高温の増加と異常低温の減少傾向がみられ、この結果は2.1.2項の平均気温の昇温傾向と一致している。年間でみた異常高温の出現数は1940年代から徐々に増え、1950年代を境に異常高温が異常低温の出現数を上回るようになった。1980年代以降は異常高温の出現数の増加が顕著となっており、1.3.3項で述べる世界の多くの地域でみられる異常高温の出現数の変化の特徴と共通している。一方、異常低温は1990年代以降、ほとんど出現しなくなった。年々の値で異常高温の出現数が多いのは1990年、1998年、2004年で、1990年代以降に集中している。
季節別の出現数の推移は、基本的には年間の出現の傾向と類似しているが、1940年代は冬と春に異常低温の出現数が多かったのに対して、1900年代初頭では夏と秋に異常低温の出現数が多かったという特徴がみられる。また、冬の異常低温は1990年代以降ほとんど出現していない。一方、異常高温は各季節とも1980年代以降の増加が顕著であるが、1990年代後半の冬の異常高温は少なくなっている。
図1.3.2 月平均気温の高いほうから1〜3位(異常高温)と低いほうから1〜3位(異常低温)の出現数の経年変化(年および季節:日本)
1地点あたりの出現数。年のグラフには年々の値(細線)と11年移動平均値(太線)を示し、季節のグラフには11年移動平均値のみを示した。
| 異常高温 | 異常低温 | |||
|---|---|---|---|---|
| 年間 | 0.95* | (580%) | -0.60* | (29%) |
| 冬 | 0.13* | (236%) | -0.11 | (27%) |
| 春 | 0.26* | (785%) | -0.10 | (30%) |
| 夏 | 0.23* | (635%) | -0.18* | (38%) |
| 秋 | 0.32* | (1344%) | -0.21* | (22%) |
変化傾向は一次回帰式より求めた100年間あたりの異常値の出現数の変化(傾き)を示す。単位は1地点あたりの出現数。*は5%の危険率で変化傾向が有意であることを示す。カッコ内は1901〜1930年の出現数の合計に対する1975〜2004年の出現数の合計の比。
2)日最高・最低気温の異常値の出現数の経年変化
図1.3.3に、1901〜2004年の104年間での日最高気温の高いほうから1〜3位の出現数と日最低気温の低いほうから1〜3位の出現数の経年変化を示す。日最高気温の高いほうから1〜3位の値の出現数は、月平均気温の異常高温の出現数の傾向と類似しているが、その長期変化傾向(表1.3.4)は月平均気温のもの(表1.3.3)ほど大きくはない。特に、冬は有意な増加傾向がみられない。
一方、日最低気温の低いほうから1〜3位の出現数は、月平均気温の異常低温の出現数の傾向と類似した推移がみられ、減少傾向は月平均気温のものよりも大きい。季節的にもすべての月で有意に減少しており、1990年代以降、冬と夏の季節において、その出現は皆無である。2.1.2項(4)に示しているように、1898年から2004年の100年間あまりで、日最高気温よりも日最低気温の上昇率が大きく(日較差(最高気温と最低気温の差)が小さく)、こうした日最低気温の平均値のより大きな上昇を反映して、日最低気温の異常値の出現数にも大きな減少傾向があらわれていると考えられる。
| 日最高気温 | 日最低気温 | |||
|---|---|---|---|---|
| 年間 | 0.40* | (217%) | -0.70* | (19%) |
| 冬 | 0.04 | (93%) | -0.21* | (27%) |
| 春 | 0.17* | (245%) | -0.21* | (18%) |
| 夏 | 0.18* | (352%) | -0.29* | (14%) |
| 秋 | 0.12* | (261%) | -0.22* | (19%) |
表の見方は表1.3.3と同様。
3)日最高気温30℃以上および35℃以上の日数の経年変化
日最高気温が30℃以上(真夏日)と35℃以上の年間日数(17地点の平均)の経年変化を図1.3.4に示す。統計値として存在する期間として、日最高気温が30℃以上の日数は1931年〜2004年、35℃以上の日数は1961〜2004年について示している。日数は1地点あたりの年間日数である。1931年以降では、30℃以上の日数に有意な増加傾向はないが、1980年代以降は増加傾向がある。一方、35℃以上の日数は1970年代までは大きな増減はなかったが、1980年代後半以降増加しており、最近は1970年代までの約3倍の出現頻度となっている。このように、熱中症に結びつくような極端な高温は、最近大幅に増加している。
4)まとめ
2.1.2項で述べているように、日本の平均気温は長期的に上昇しており、特に1980年代後半以降、急速に上昇し、その後も高い状態が持続している。IPCC(2001)によれば最近50年間に観測された温暖化の多くは人間活動によるものとされており、こうした人為起源の温暖化と、1.1.3項で述べているような最近の中緯度帯の対流圏の高温の持続などの要因により、日本付近の高温がもたらされていると解釈できる。このような高温を背景に、1990年代以降は月平均気温や日最高気温の高いほうの異常値が、少なくとも過去100年になかった頻度で出現しており、ことに夏には、熱中症などの健康被害に結びつく日最高気温35℃以上の極端な高温が大幅に増加している。2.7.2項で述べているように、温室効果ガスの排出の増加により100年後には、真夏日日数は日本全域で増加し、日最高気温35℃以上の日数も関東内陸などで数日程度の増加が予測されている。IPCC(2001)でも暑い日が増加する可能性がかなり高いとしている。こうしたことから日本における極端な高温は今後とも長期的には増加していくものと考えられる。一方、極端な低温は、高温とは逆に減少していくものと考えられる。
1)月降水量の異常値の出現数の経年変化
図1.3.5に1901〜2004年の104年間での月降水量の多いほうから1〜3位(異常多雨)の出現数、および少ないほうから1〜3位(異常少雨)の出現数の経年変化を、表1.3.5に異常多雨・異常少雨の出現数の長期変化傾向をそれぞれ年と季節別に示す。
年間の降水量の異常値の出現数の変化傾向は、気温ほど明瞭ではないが、長期的に異常少雨の出現数が有意に増加する傾向がある。1940年代前半にかけては次第に異常少雨の出現数が増加したが、その後いったん減少し、1950年代以降最近まで増加傾向がみられる。異常少雨の出現数を季節的にみると、秋にのみ有意な増加傾向がある。また冬の異常少雨の出現数は、1970年代に大きく増加している。
一方、異常多雨については1930年代と1970年代から1980年代の前半に比較的少ない時期があったが、長期的には増加・減少傾向はない。
季節的に有意ではないが冬には減少、秋には増加傾向があり、季節により異なる傾向がある。
異常多雨と異常少雨の出現傾向を同じ時期でみると、1980年ころまでは異常少雨の出現数が多い時期には異常多雨の出現数が少ないといった傾向があるが、1980年代以降は、異常多雨、異常少雨の出現数ともに増加傾向がある。両者の合計の長期変化傾向をみても、有意な増加傾向があり、1980年代以降は降水量の変動性が増加している(極端に多い降水量と少ない降水量が出やすい)ことが認められる。
図1.3.5 月降水量の多いほうから1〜3位(異常多雨)と少ないほうから1〜3位(異常少雨)の出現数の経年変化(年および季節:日本)
1地点あたりの出現数。年のグラフには年々の値(細線)と11年移動平均値(太線)を示し、季節のグラフには11年移動平均値のみを示した。
| 異常多雨 | 異常少雨 | |||
|---|---|---|---|---|
| 年間 | -0.00 | (91%) | 0.20* | (153%) |
| 冬 | -0.06 | (50%) | 0.05 | (156%) |
| 春 | -0.01 | (81%) | 0.07 | (170%) |
| 夏 | -0.02 | (92%) | 0.07 | (106%) |
| 秋 | 0.07 | (167%) | 0.08* | (204%) |
表の見方は表1.3.3と同様。
2)日降水量の異常値の出現数の経年変化
図1.3.6に1901〜2004年の104年間での日降水量の多いほうから1〜3位の出現数の経年変化を、表1.3.6にその長期変化傾向を示す。表1.3.6から104年間で有意な増加・減少傾向はないが、2004年は過去104年間でもっとも日降水量の異常値が多く出現した年であった。これは、主に10月の台風第23号や前線にともなう大雨、12月上旬の気圧の谷と台風第27 号がもたらした暖湿気による大雨である。季節ごとに季節内の各月について多いほうから1〜3位の出現数を求めると、秋にのみ有意な増加傾向がある。
| 日降水量 | ||
|---|---|---|
| 年間 | 0.09 | (116%) |
| 冬 | -0.01 | (71%) |
| 春 | -0.01 | (95%) |
| 夏 | 0.01 | (116%) |
| 秋 | 0.08* | (210%) |
表の見方は表1.3.3と同様。
3)日降水量100mm以上および200mm以上の日数の経年変化
図1.3.7に日降水量100mm以上および200mm以上の日数の経年変化を、表1.3.7にその長期変化傾向を示す。1地点あたりの観測日数で示している。
日降水量100mm以上および200mm以上の日数は104年間で有意な増加傾向がある(表1.3.7)。最近30年間(1975〜2004年)と20世紀初頭の30年間(1901〜1930年)を比較すると100mm以上日数は1.19倍、200mmの日数は1.46倍の増加となっている(表1.3.7)。1930年代までと1940年代以降で出現数や年々変動(1930年代まではそれ以降に比べ年々変動幅が小さい)に差がみられるが、この時代の大気の流れを示すデータがないことから、差が生じている要因は不明である。さらに1940年代以降を詳しくみると、1940年代から1950年代と1990年代以降に多い傾向があることがわかる。図1.3.8に示すように、日降水量100mmおよび200mm以上の日数は6〜9月に多く、この4か月間でそれぞれ年間の日数の約75%および約81%を占めることから、この期間の変動をより詳しくみることにする。
この期間を本州付近で梅雨の期間に相当する6〜7月と台風が比較的多く本土に接近する8〜9月の期間に分け、それぞれの推移をみると、100mm以上の日数にはどちらの期間も有意な長期的な増加傾向はない(表1.3.7)。ただし、8〜9月の日数には1980年代以降増加傾向があり、過去約100年間になかった頻度で出現している(図1.3.9)。
日降水量200mm以上の日数もほぼ100mm 以上の日数と同様の変動をしている。つまり、台風の接近が比較的多い8〜9月については、最近20年間程度の期間でみると、多くの地域で大雨災害に結びつく可能性のある降水が、過去100年間でもっともあらわれやすくなっているといえる。こうした大雨は、前線や低気圧、台風等、さまざまな要因でもたらされるが、8〜9月の東・西日本への台風接近数と同地域の日降水量100mm以上や200mm以上の日数には有意な正の相関(例えば四国への台風接近数と西日本の100mm以上の日数の相関係数:0.43)がみられることや、日本の南海上から南西諸島に台風が存在する頻度が最近約50年間の前半に比べ後半は増加している(図1.3.28参照:年間の頻度変化を示したものであるが、8〜9月に限定しても同様の分布となる)ことから、台風の接近数の変動が大雨の変動の主な要因の一つになっていると考えられる。
| 100mm以上 | 200mm以上 | |||
|---|---|---|---|---|
| 年間 | 0.24* | (119%) | 0.043* | (146%) |
| 6-7月 | 0.08 | (120%) | 0.016 | (184%) |
| 8-9月 | 0.10 | (116%) | 0.023 | (141%) |
表の見方は表1.3.3と同様。
4)日降水量の強度別比率の経年変化
次に示すのは、季節や地域に偏らない指標として、地点ごと・月ごとに定義した日降水量の階級区分を利用したものである。階級は降水量の少ないほうから1、2…と階級をつけ、全体で10段階に区分している。算出方法の詳細は、本項の(3)に記述している。
図1.3.10は階級1、3、8、10に相当する年降水量の長期変化を示したものである。弱い降水階級(階級1、3)の年降水量は長期的に減少、最も強い降水階級(階級10)の年降水量は増加していて、弱い降水の減少傾向と強い降水の増加傾向が裏づけられる。
図1.3.11は各階級の降水量の経年変化率(一次回帰による変化傾向)を季節別に示したものである。弱い降水の減少傾向と強い降水の増加傾向が冬を除く各季節にみられる。図1.3.12は全国51地点の平均および地域別のものである。各地域においても同様の傾向がみられ、北日本や東日本に比べて西日本で強い降水が増加する傾向がより顕著である。
5)まとめ
月降水量の長期的変化傾向をみると、異常少雨が有意に増えているが、異常多雨には明瞭な傾向はみられなかった。
日降水量は、異常気象に相当する頻度の出現数には長期的な増加傾向の有意性は確認できなかったが、6〜9月に多く観測される100mmおよび200mm以上の日降水量の年間日数は有意に増えており、特に8〜9月における日数は、最近20年程度の期間で、過去約100年にみられなかった頻度でこうした大雨があらわれている。
総降水量で階級分けした指標を用いた場合には、冬を除く各季節・各地域において強い降水の増加傾向と弱い降水の減少傾向がみられる。Fujibe et al.(2005)は日降水量と4時間降水量を総降水量で規準化し、同様の階級分けした解析を行っており、この傾向がより明瞭に示されている。
また、総降水量で階級分けした弱い降水の減少と強い降水の増加は、1.3.4項で示すように日本のみならず東アジアの広い範囲で共通してみられる。さらに日本においては、冬を除く各季節において同様の傾向があらわれている。これらのことは台風や大気循環などの変動だけではなく、地域に限定されない変動(例えば地球温暖化や水蒸気量の増加)が寄与している可能性も考えられる。
以上のように、約100年間にわたる長期間でみた場合、日降水量でみた大雨には増加傾向がみられる。ただし、一様に増加しているわけではなく、増減を繰り返しながら長期的に増加しており、最近ではどの指標にも1980年代以降に増加傾向がみられる。
IPCC(2001)の言及している「20世紀後半、北半球中・高緯度域においては、大雨の発現頻度が2〜4%増加した可能性が高い」ことや、「中・高緯度域の大部分、特に北半球において、年総降水量に占める大雨や極端な降水現象による降水量の割合が増えつつある可能性が高い」とする見解は、本項で示した当庁の解析結果と矛盾はない。
最近の研究では、世界的にも強い降水が多くの地域で増加しており、気候モデルとの比較の結果、強い降水の増加は地球温暖化と関連しているという証拠が明らかになりつつあるとしている(Groisman et al., 2005)。
温暖化が進んだ場合、大気中の水蒸気量が増加することにより、21世紀末には1.4.1項、2.7.2項で示したように日降水量100mm以上や200mm以上などの大雨が日本の多くの地域で増加すると予測されており、観測結果から得られた長期傾向はこの予測と一致している。
大雨の増加傾向が東アジアの広い範囲、さらには世界的にも共通してみられること、大雨の増加の長期傾向と予測の傾向が一致していることを踏まえると、今回解析された日本の大雨の長期的な増加傾向に、地球温暖化の影響があらわれている可能性があるといえる。しかし、その影響がどの程度あらわれているのかは現時点では未解明である。また、異常少雨の出現数の増加の要因ははっきりしておらず、現段階では地球温暖化との関連性は不明である。
今後、地球規模での総合的な解析、気候モデルによる再現・予測実験等をつうじて、大雨の変動と地球温暖化の関連について解明を進めて行く必要がある。
日本の異常気象の長期的な変動をみるために、月平均気温と月降水量および日最高/最低気温、日降水量について次の方法により解析を行った。
1)月平均気温・月降水量の異常値の求め方
月平均気温の異常値の出現数は、次の方法で求めた。1901〜2004年の104年間で各月、各観測地点における月平均気温の高いほう・低いほうから1〜3位の値(異常値)を、それぞれ異常高温・異常低温の基準値とした。ある年(季節)の異常高温・異常低温の出現数は、その年(季節)に異常値を観測した地点数の年間合計を観測地点数で割り、1地点あたりの出現数としている。
ある地点のある月に、月平均気温の高いほう・低いほうから1〜3位の値が出現する割合は、それぞれ104年間に3回、つまりおよそ35年に1回(0.029回/年)となり、異常気象とされる発現頻度にほぼ相当する。年間12か月の合計では1地点あたり、0.029回×12か月で約0.35回、季節の合計では0.029回×3か月で約0.09回となる。
月降水量の異常値の出現数も月平均気温と同様の基準、手法で求めた。すなわち、1901〜2004年の104年間で各月における月降水量の多いほう・少ないほうから1〜3位の値を、それぞれ異常多雨・異常少雨の基準値とした。
2)日最高・最低気温、日降水量の異常値の求め方
1901〜2004年の104年間で各月、各観測地点における日最高気温の高いほうから1〜3位の値を日最高気温の異常値とし、日最低気温の低いほうから1〜3位の値を日最低気温の異常値とした。日降水量の異常値については、1901〜2004年の104年間で各月における日降水量の多いほうから1〜3位の値を日降水量の異常値とした。それぞれの異常値の出現数の求め方は、月平均気温の異常値の出現数の求め方と同様である。
3)日降水量の強度別比率の求め方
日降水量の強度別比率は、地点ごと・月ごとに定義した日降水量の階級区分を利用したものである。その階級区分は次のように作成した。1901〜2004年の104年間に降水のあった日のすべての日降水量を、降水量の少ないほうから順に並べ、10段階に区分する。その区切りは各階級に属する日降水量の合計が、その月の総降水量の10%ずつになるように設定する。例えば1901〜2004年の104年間の東京の7月の総降水量は約14860mmであるが、この104年間で、日降水量の少ないほう(0.1mm)から順に合計して総降水量の10%、つまり1486mmとなる境界は日降水量5.8mmとなる。そこで、日降水量「5.8mm未満」を最も低い階級(階級1)とする。同様に、日降水量5.8〜11.7mmを観測した日の降水量をすべて足しあわせると1480mmになるので、これを次の階級(階級2)とする。以下同様にし、最高の階級(階級10)は「日降水量93.4mm以上」となる。
1.3 異常気象の長期変動 <<前へ | 次へ>> コラム:アメダスでみた大雨発生回数