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ホーム > 気象統計情報 > 地球環境・気候 > 20世紀の日本の気候 > 1.4 日本を取り巻く大気と海洋 > 1.4.5 エルニーニョ現象

1.4.5 エルニーニョ現象

1997年11月の太平洋の海面水温の平年差(単位:℃)

図1.4.5.1:1997年11月の太平洋の海面水温の平年差(単位:℃)

 大規模な海洋の変動として代表的なものにエルニーニョ現象とラニーニャ現象があります。図1.4.5.1は,1997年の春に発生して1998年の夏に終息したエルニーニョ現象の最盛期であった1997年11月の太平洋の海面水温の平年(1971〜2000年の30年間の平均)からの偏差の分布を示しています。

 赤道に沿った海域では日付変更線の東から南米沿岸にかけて,海面水温が平年より1℃以上高くなっており,4℃以上高いところも見られます。エルニーニョ現象は,このように南米のペルー沖から中部太平洋にかけての赤道域において海面水温が平年より高い状態が1年程度続く現象です。一方,これとは逆に,同じ海域で海面水温が平年より低くなる現象がラニーニャ現象です。どちらも,太平洋赤道域だけでなく,世界各地の天候に大きな影響を及ぼすことが知られています。

エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常時(a),エルニーニョ現象時(b),ラニーニャ現象時(c)の太平洋赤道域の大気と海洋の状態を示す模式図

図1.4.5.2:エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常時(a),
エルニーニョ現象時(b),
ラニーニャ現象時(c)の太平洋赤道域の大気と海洋の状態を示す模式図

 図1.4.5.2はエルニーニョ現象が発生している時,ラニーニャ現象が発生している時,及びいずれも発生していない平常時の太平洋赤道域の大気と海洋の状態を模式的に表したものです。

 海洋では一般的に,密度が大きい冷たい水が深い層を占め,その上に密度の小さい暖かい水が分布しています。また,海上では通常,貿易風と呼ばれる東風が吹いています。この東風によって,海面付近の暖かい水が太平洋の西側に吹き寄せられてインドネシア近海に蓄積しています。一方東部では,東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい水が海面近くに湧き上っています。このため,太平洋赤道域の海面水温は西で高く,東で低くなっています。さらに,海面水温の高いインドネシア近海では,海面からの蒸発が盛んで,大気中に大量の水蒸気が供給され,上空で積乱雲が盛んに発生しています。これが図1.4.5.2(a)に示した平常時の状態です。

 上で述べた東風の強さと太平洋赤道域の西と東との海面水温の差の大きさには互いに強め合う・弱め合うという関係があります。エルニーニョ現象・ラニーニャ現象はこのように大気と海洋が相互に影響を及ぼしあうことによって発生します。エルニーニョ現象が発生している時は,図1.4.5.2(b)に示したように,東風が平常時よりも弱くなっています。また,西部に溜まっていた暖かい水が東方へ広がるとともに,東部では冷たい水の湧き上りが弱まっています。このため,太平洋赤道域の中部から東部では海面水温が平常時よりも高くなっており,これに伴って,積乱雲が盛んに発生する領域も東へ移っています。一方,図1.4.5.2(c)に示したラニーニャ現象のときは,東風が平常時よりも強くなっています。このため,西部に暖かい水が厚く蓄積する一方,東部では冷たい水の湧き上がりが強くて海面水温が平常時よりも低くなっています。また,インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生しています。

 エルニーニョ現象やラニーニャ現象については,世界的に統一された定義はありませんが,気象庁では,南緯4度と北緯4度,西経150度と西経90度で囲まれた海域をエルニーニョ監視海域として,この海域の月平均海面水温の基準値(1961〜1990年の30年間平均した値)との差の5か月移動平均値が,6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象,6か月以上続けて−0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象と定義しています。気象庁にこの海域の海面水温の解析データが整備されている1949年以降で,この定義に適合するエルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生期間は表1.4.5.1のとおりです。なお,発生・終息の時期は季節単位で表すことにしています。

表1.4.5.1:エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生期間
(各季節は北半球のもの)
エルニーニョ現象ラニーニャ現象
1949年夏〜50年夏
1951年春〜51/52年冬
1953年春〜53年夏1954年春〜56/57年冬
1957年春〜58年春
1963年夏〜63/64年冬1964年春〜64/65年冬
1965年春〜65/66年冬1967年夏〜68年春
1968年秋〜69/70年冬1970年春〜71/72年冬
1972年春〜73年春1973年春〜74年春
1974年秋〜76年春
1976年夏〜76/77年冬
1982年春〜83年夏1984年秋〜85年夏
1986年秋〜87/88年冬1988年春〜89年春
1991年春〜92年夏
1993年春〜93年夏
1997年春〜98年夏1998年秋〜99年春
1999年夏〜2000年春

 図1.4.5.3には,エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の時系列とエルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生期間が示してあります.この期間に発生したエルニーニョ現象のうちでは,1982/83年と1997/98年のエルニーニョ現象が,海面水温の基準値との差が大きいという点で顕著なものでした。

エルニーニョ監視海域における月平均海面水温の基準値との差(単位:℃)

図1.4.5.3:エルニーニョ監視海域における月平均海面水温の基準値との差(単位:℃)

緑色の線は月々の値,黄緑色の滑らかな線は5か月移動平均値を示しています。
エルニーニョ現象の期間には赤色で,ラニーニャ現象の期間には青色で陰影が施してあります。

 参考に,長期にわたるエルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生状況を示すため,英国大気データセンター(The British Atmospheric Data Center)所有の月平均海面水温データを用いて,1901年から1998年までのエルニーニョ監視海域における基準値との差の経年変化を図1.4.5.4に掲げました。ここで,基準値は気象庁の定義と同じく1961〜1990年の30年間平均した値を用いますが,エルニーニョ監視海域には南緯5度と北緯5度,西経150度と西経90度で囲まれた海域を採用しています。

エルニーニョ監視海域における月平均海面水温の基準値との差の経年変化(単位:℃)

図1.4.5.4:エルニーニョ監視海域における月平均海面水温の基準値との差の経年変化(単位:℃)

英国大気データセンター(The British Atmospheric Data Center)所有のデータを使用して気象庁で作図しました。
基準値は,気象庁の定義と同じく1961〜1990年の30年間平均した値を用いています。
エルニーニョ監視海域には,南緯5度と北緯5度,西経150度と西経90度で囲まれた海域を採用しています。
黄緑色の線は5か月移動平均値を示しています。基準値よりも高いときは赤色,低いときは青色で陰影が施してあります。


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